7月から事実上、解禁となった高校生の就職活動。その求人倍率は4.1倍と「超売り手市場」となっていて、「争奪戦」となっているんです。企業が熱視線を注ぐ“金の卵たち”。大卒とは違う魅力とは何なのでしょうか?
【写真を見る】“争奪戦”の高卒人材 企業側が打ち出す“ウリ”
高卒社員、入社6年目でスシロー万博店の店長に抜擢
大阪万博の会場内にある、大手回転寿司チェーン・スシローの店舗は、朝から多くの客で賑わいをみせています。
スシロー社員 太田映梨奈さん(24)
「きょうで何回目のご来店ですか。4回目ですか、ありがとうございます」
精力的にお客の対応にあたっていたのは、太田映梨奈さん(24)。高校卒業後に、スシローに入社しました。
スシロー社員 太田さん
「高校1年生の冬にアルバイトをスシローで始めたあたりから、働くことの楽しさに気づいて。何の目的もなく大学に進学しても、果たして自分のやりたいこと、将来のためになるのかと考えた時に、就職しようかなと」
その働きぶりが評価され、入社6年目で万博店の店長のひとりとして抜擢されました。
スシロー社員 太田さん(英語で案内)
「戻ってきた時に、この番号を見せて下さい。万博を楽しんで」
太田さんとともに働く“年上”の社員は…
太田さんの“年上”社員
「年下とは思えないくらい頼りがいがあって。尊敬しかないので、私自身が」
「指示も的確にして下さるし。導いてくれるのが上手」
高卒人材の“争奪戦” 企業側はユニークなウリも
実は今、太田さんのような、高卒の人材が“争奪戦”となるほど人気を集めています。
5月に大阪で行われた高校生を対象とした職業体験会。全国から77の企業・団体が参加しました。
実際の仕事内容に触れてもらうほか、大卒に引けを取らない待遇をアピール。
物流の会社は「資格取得費用の全面支援」を強調します。
物流業
「お給料も貰える、資格も取れる。高卒は欲しくて欲しくて仕方がない。『金の卵』ですね」
こちらの警備会社のウリは、「動画配信サービスの見放題」。
警備会社
「人員を確保するために、求職者(高校生)に刺さる部分として押し出している」
2025年3月卒の高校生の求人倍率は、全国平均で4.1倍と過去最高を記録。大卒の求人倍率、1.75倍をはるかに上回る「超売り手市場」となっているのです。
「深刻な人手不足」も要因の一つですが、参加企業の多くから聞かれたのが、むしろ「高卒の方が欲しい」という声です。
自動車関連会社
「(高校卒業して)早く社会に出たい、早く技術を身につけたいという生徒が多い。しっかり仕事に取り組もうという姿勢の方が多い印象」
システムエンジニア業
「高校生から仕事でお金を稼いでいこうという気持ちがある点で、やる気があって来ている」
IT企業が初めて高卒人材を採用 メリットは?
都内にある、従業員40人ほどのIT企業は、この春、初めて高卒人材を採用しました。
4月に入社したばかりの國兼桃香さん(18)。埼玉県内の公立高校を卒業し、クラスの中で唯一、進学ではなく就職を選びました。
國兼桃香さん(18)
「仕事っていきなり実践に入って行う環境だから、周りの子(進学した同級生)たちより経験は多く積めているなと感じる。20代前半らへんに結婚できたらいいなという願望は自分の中にあって、貯金をいまのうちからしていくことで将来的にもいいかなと」
國兼さんはシステムエンジニアとして採用されましたが、プログラミングは未経験。この日、初めて研修を受けました。
将来の幹部候補として期待される國兼さん。その存在は、会社の先輩たちにも良い刺激を与えているようです。
先輩社員
「社会人4年目で、諦めを学んでしまってここまで来て。でも國兼さんは『なんでこうなるんですか』と納得するまで聞いてくれるので、ちゃんと自分が理解すること、納得することを諦めちゃいけないんだと、國兼さんをみて刺激をもらっている」
MAP経営 伊藤昌博 代表取締役
「大学を経なくても、自分のやりたいことが明確になっていたり就労への目的意識が高ければ、大卒よりもむしろ4年間の育成(期間を)ロングに取れるのでメリットはあるなと」
さまざまな可能性を秘めた高卒採用。その一方で、「課題」も指摘されています。
「学歴について考え直す時期」 高校生の就職活動には「課題」も
藤森祥平キャスター:
“働く意欲”に溢れている高校生を見ていると気持ちがいいですし、チームに与えるプラスの影響が評価されているんですね。
伊沢拓司さん:
「東大王」をやっていた僕が言うことではないかもしれませんが、「学歴」について考え直す時期が来ていると思います。
ミクロ経済学の理論で“シグナリング効果”というものがあります。人の生産性は見た目では分からないので、それを示す一つの根拠として学歴があります。
ただ、学歴が(生産性の)根拠になるには、大学に入るまでの勉強が、生産性が高い人にとっては“お得”で、低い人にとっては“苦痛”であるという前提が成り立つ必要があります。そのときに初めて、学歴が能力の指標になるという話ですが、いろいろな入り方もあり、今はもう大学に入るための勉強が生産性を表すものではなくなってきています。
大学に入るかどうかは、家庭環境や地域の状況によるところが大きくなっていると考えると、人の能力を学歴だけで判断するのは難しいですし、今の長い就活のステップでは学歴よりもさまざまな点を見ているのではないでしょうか。就職の判断材料としては、もっと広いものを使うべき時代が来ているのかなと思います。
上村彩子キャスター:
高校生の就職活動は、大学生とは違うそうです。
学校に届いた求人から、一定期間ですが1人1社しか応募できないという慣例が残っている地域もあるということです。学校による斡旋が一般的で、ミスマッチが起こりやすいという指摘もあります。
一方で企業側からは「年が離れすぎて接し方がわからない」「アルバイトなど社会経験が少なく、イチから教育する大変さはある」という声も聞かれました。
藤森キャスター:
高卒人材が長く活躍できる社会をどう作ればよいのでしょうか。
伊沢さん:
まずは、学歴に対する偏見・慣例を一つ一つ壊していく必要があると思います。
コミュニケーションの難しさはあると思いますが、大卒もそれほど年は離れていないし、アルバイトの社会経験も人それぞれです。コミュニケーションツールや、サポートしてくれる第三者などを、企業が活用することが求められていると思います。
そもそも売り手市場なので、今こそ慣例を壊す時期なのかなと思いますし、慣例を壊せる企業が人気を集める可能性はあると思います。
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<プロフィール>
伊沢 拓司さん
株式会社 QuizKnock CEO
クイズプレーヤーとして活躍中
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