
ダイヤモンドリーグは単日、または2日間開催では世界最高レベルの陸上競技会で、今年は4月16日の厦門(中国)から8月27~28日のチューリッヒ(スイス)まで15大会が開催される。
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7月にはユージーン(米国・7月5日)、モナコ(モナコ・7月11日)、ロンドン(英国・7月19日)の3大会が行われた。男子100m&200mは前回世界陸上2冠のN.ライルズ(27、米国)の状態が上がらず、混戦が予想される。日本勢では三浦龍司(23、SUBARU)がモナコ大会3000m障害で8分03秒43と、日本記録を大幅に更新して2位に食い込んだ。7月のダイヤモンドリーグでどんな記録が生まれ、9月の東京2025世界陸上に向けてどんな話題があったかを紹介する。
ボルト引退後の低迷期を脱したジャマイカ勢
男子短距離はブダペスト世界陸上100m&200m2冠、昨年のパリオリンピック™100m金メダリストのライルズが出遅れているため、特に100mは本命不在の状況になっている。
ユージーン大会ではK.トンプソン(24、ジャマイカ)が9秒85(追い風0.4m)で、ロンドン大会ではO.セビル(24、ジャマイカ)が9秒86(向かい風0.6m)で優勝。U.ボルト(ジャマイカ)が引退してから勢いがなかったジャマイカ勢が、世界陸上でも再び頂点を狙う位置に上がってきた。
ライルズはロンドンの100mが10秒00で、セビルに完敗した。9秒79の自己記録とまでは言わないが、せめて9秒8台中盤に戻さないと、ジャマイカ勢が16年リオ五輪のボルト以来の金メダルを手にすることになる。だが200mではライルズが健在だ。ユージーン大会はパリ五輪金メダルのL.テボゴ(22、ボツワナ)が、19秒76(追い風0.7m)で優勝した。しかしモナコ大会ではライルズが19秒88(向かい風0.8m)で優勝し、19秒97のテボゴを破った。東京世界陸上の200mは金メダリスト2人の対決になりそうだが、現時点ではライルズがやや優位に立っている。
男子800mはワニョンニに世界記録更新を期待できる状況
ライバルが激突する種目や本命不在の種目も多いが、男子800mはパリ五輪金メダルのE.ワニョンニ(20、ケニア)が、絶対的な本命といえる状況だ。ダイヤモンドリーグでは5月のラバト大会こそ3位と敗れたが、6月のオスロ&ストックホルム、7月のモナコ&ロンドンと4連勝中だ。
ワニョンニは東京世界陸上の金メダル候補ということだけでなく、D.ルディシャ(ケニア)の世界記録1分40秒91を破る可能性を持つ。自己記録は昨年8月にマークした1分41秒11。このタイムは世界歴代2位タイ、世界記録に0.20秒と迫った。今季のダイヤモンドリーグ4連勝中2回が1分41秒台で(モナコ大会の1分41秒44が今季世界最高)、1分41秒台の回数はトータルで6回となり、ルディシャの7回に迫っている。ワニョンニは男子800mの世界記録をいつ出してもおかしくない状況を、ダイヤモンドリーグで見せている。
日本勢の好成績は世界陸上につながる内容
日本勢はモナコ大会男子110mハードルに村竹ラシッド(23、JAL)、同大会男子3000m障害に三浦龍司(23、SUBARU)、ロンドン大会女子5000mに田中希実(25、New Balance)が出場。三浦の走りが記録、着順とも素晴らしかった。
タイムは8分03秒43と自身の持っていた日本記録(8分09秒91)を6秒以上も更新。最後は抜き返されて0.25秒差で敗れたが、世界陸上&五輪で4大会連続金メダルのS.エルバカリ(29、モロッコ)を、最後の1周で一度は抜き去った。
「今日はアメイジングなレースでした。日本記録を出したいと思っていましたが、この結果は私にとってとてつもなく大きく、多くの自信を与えてくれるものです。特に2か月後に地元で世界陸上が開催されますが、そこでメダルに挑戦できます」
ダイヤモンドリーグ公式サイトに、三浦は上記のようにコメントした。
村竹はモナコ大会110mハードルで13秒17(向かい風0.9m)の4位。ダイヤモンドリーグ今季4試合目で、以下のような戦績を残してきた。
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4月26日:厦門大会2位・13秒14(追い風0.3m)。1位と0.08秒差
5月 3日:上海紹興大会2位・13秒10(追い風0.6m)。1位と0.23秒差
6月20日:パリ大会4位・13秒08(追い風1.1m)。1位と0.08秒差
7月11日:モナコ大会4位・13秒17(向かい風0.9m)。1位と0.08秒差
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このレベルを続けていることに価値がある。ダイヤモンドリーグの年間ポイントが現時点で24点の2位。8月のローザンヌ大会でも110mハードルは行われるが、モナコ大会の結果でダイヤモンドリーグ・ファイナル(8月29日チューリッヒ)の出場権を獲得した。
世界トップで戦えている自信は、世界陸上に向けても大きな力となるだろう。そして田中はロンドン大会女子5000mで、14分34秒10の7位に食い込んだ。ダイヤモンドリーグは今季3戦目で、6月6日のローマ大会1500mは14位、同15日のストックホルム大会3000mは11位。今季新設されたグランドスラムトラック大会では7~8位と苦戦が続いていたため、7月頭の日本選手権で「自分の強さ」を確かめることで足元を固めた。
ロンドン大会は自己ベストに約5秒と迫る自身3番目のタイム。8位だったブダペスト大会に続く世界陸上入賞が見えてくる結果だった。8月21日のダイヤモンドリーグ・ローザンヌ大会には、故障から回復すれば女子やり投の北口榛花(27、JAL)も出場予定だ。8月もダイヤモンドリーグに注目することで、9月の東京世界陸上の面白さが増すはずだ。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
*写真は左から三浦龍司選手、N.ライルズ選手
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