
ダイヤモンドリーグは単日、または2日間開催では世界最高レベルの陸上競技会で、今年は4月16日の厦門(中国)から8月27~28日のチューリッヒ(スイス)まで15大会が開催される。
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7月にはユージーン(米国・7月5日)、モナコ(モナコ・7月11日)、ロンドン(英国・7月19日)の3大会が行われた。ユージーン大会では女子1500mでF.キピエゴン(31、ケニア)が3分48秒68、B.チェベト(25、ケニア)が13分58秒06の世界新をマークした。また、4月に男子円盤投で世界新をマークしたM.アレクナ(22、リトアニア)が、ダイヤモンドリーグでも快投を続けている。
前世界記録保持者とのデッドヒート
ユージーン大会が歴史に残る大会となった。13時20分にスタートした女子5000mで女子選手初の13分台が、14時50分スタートの女子1500mで初の3分48秒台が誕生した。
5000mでドラマチックだったのはチェベトが、23年のユージーン大会で前世界記録の14分00秒21を出したG.ツェガイ(28、エチオピア)と、最後まで競り合っていたことだ。残り200m(4800m)地点で2人の差は0.2秒で、ほぼ並んでいた。そこからチェベトが猛スパートを見せ、コーナーの出口までで20m近く引き離した。チェベトのラスト200mは28秒8で国内男子レベル。世界初の13分台は前記録保持者との競り合いで達成された。
「14分を切った世界で最初の女性になれて、とても嬉しいです。ダイヤモンドリーグ・ローマ大会の後、私は世界記録が出せると思っていました」
6月6日のローマ大会(14分03秒69で優勝)のレース後には「3000mまで良いペースで走る選手がいたら世界記録も出せると思いました。近いうちに14分切りを目指して走ります」と宣言していたのだ。
チェベトは10000mでも初の28分台(28分54秒14)を、昨年のユージーン大会で出していた。同じユージーンで行われた22年のオレゴン世界陸上では、5000mでツェガイに0.46秒差で競り負け銀メダルだった。苦い思い出があったであろうユージーンを、2年連続記録の壁を破る快走で、女子長距離の歴史に残る場所に変えてみせた。
ともに世界新を宣言してユージーンに
キピエゴンの存在も、チェベトのモチベーションアップにつながっていた。「フェイス(キピエゴン)がユージーンで世界記録に挑戦するなら、私だってやれるはず!と自分に言い聞かせていました」
キピエゴンは6月26日にパリで、スポーツメーカーが主催した非公認の1マイル(約1609m)レースで4分切りを目指していた。4分06秒42に終わったが、このタイムを1500mに換算すると3分49秒73になる。1500mの世界記録は昨年7月にキピエゴン自身が出した3分49秒04である。
キピエゴンは「パリで4分を切る準備をしていたので、1500mなら3分49秒を切れるとわかっていました」とユージーンのレース後にコメントした。パリ滞在中にキピエゴンがユージーンでの3分49秒切りを発言し、チェベトもそれを耳にしていた、ということだろう。キピエゴンは東京世界陸上についても言及した。「今回の世界記録は東京へのロードです。私は正しい方向に進んでいます」
昨年のパリ五輪で5000mと10000mの2冠となったチェベトと、前回のブダペスト世界陸上で1500mと5000mの2冠だったキピエゴン。2人は東京世界陸上の5000mで激突する可能性がある。
4月に世界新のアレクナら投てき注目選手の動向は?
今季の有力選手たちや各種目の動向が、7月のダイヤモンドリーグで明確になってきた。今季世界最高が出た種目、東京世界陸上が面白くなってきた種目をいくつか紹介したい。
ユージーン大会で男子砲丸投のJ.コバクス(36、米国)が22m48、男子ハンマー投のR.ウィンクラー(30、米国)が83m16と、ともに今季世界最高記録で優勝した。
コバクスは23m23の世界歴代2位記録を持ち、世界陸上も15年と19年の2度優勝したが、近年は世界記録(23m56)保持者のR.クルーザー(32、米国)に負け続けている。そのクルーザーが今季、1試合も出場していない。
それに対してコバクスは5~6月のダイヤモンドリーグ2試合では勝てなかったが、ユージーン大会で初めて22mを超え、パリ五輪の2~6位が揃った戦いで快勝した。5位までが22mを超えているので油断は禁物だが、コバクスが東京世界陸上の金メダル候補筆頭に躍り出た試合になった。
ハンマー投はE.カッツバーグ(23、カナダ)が一昨年のブダペスト世界陸上、昨年のパリ五輪と優勝。パリ五輪は2位に4m15と五輪史上4番目、1921年以降では最大差をつけた。カッツバーグの覇権が今年も続くと思われたが、ユージーン大会ではウィンクラーが今季世界最高で、カッツバーグに1m43差で勝っている。
だがダイヤモンドリーグ以外の試合では、カッツバーグがウィンクラーに80~81m台の記録で今季2連勝していた。ダイヤモンドリーグの戦績ではウィンクラーが上だが、五輪&世界陸上での強さを考えると、カッツバーグ優位の評価は覆せていない。
男子円盤投は4月に75m56の世界記録を投げたアレクナが、ユージーン大会に70m97で、ロンドン大会にも71m70のダイヤモンドリーグ歴代最高記録で優勝した。父親のV.アレクナは世界陸上で2個、五輪でも2個金メダルを獲得した名選手。M.アレクナは昨年のパリ五輪2投目に69m97と、父の持っていた五輪記録を8cm更新したが、4投目に70m00を投げたR.ストナ(26、ジャマイカ)に逆転された。
しかし今季のここまでの実績を見る限り、東京では世界陸上親子2代の金メダリスト誕生がかなりの確率で実現しそうだ。
※写真はキピエゴン(左)とチェベト(24年パリ五輪、女子5000m決勝)
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
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