日本でも過去最悪の被害が出ている特殊詐欺。騙されて海外の詐欺拠点に連れ去られ、犯罪に巻き込まれる日本人も後を絶ちません。こうした犯罪の温床になっているのがカンボジアです。“詐欺帝国”といわれる国で、いま何が起きているのでしょうか。
カンボジアで摘発が相次ぐ日本人詐欺グループ
JNNが入手した、カンボジア拠点の日本人詐欺グループが4月に摘発された際の映像です。
マンションの部屋には日本の警察のポスターのほか、ニセの制服、ニセ警察手帳など、警察官を装うための小道具が。
日本に住む高齢者などの個人情報や、資産状況を聞き取ったとみられるリストも押収されました。
カンボジア・プノンペン警察サイバー犯罪対策室 シン・チャンダラ副室長
「日本人は警察官を偽装するためにAIを活用していたことが分かった。ウェブカメラの機材などを使って(詐欺被害者との)ビデオ通話で映像加工していた」
マンションを捜索した現地当局は日本人5人を拘束し、特殊詐欺に関与したとして起訴しました。
カンボジアではこのところ、特殊詐欺に関連した日本人の拘束が相次いでいますが、一方で、日本人が意図せず、詐欺組織に巻き込まれてしまう人身取引の問題も深刻化しています。
“高額報酬”うたったSNS求人 監視下だった男性が証言
カンボジアで被害 福岡県在住の男性
「高額バイトみたいな感じの募集があって、それに応募した。1泊2日で40万円〜50万円ぐらいの金額で、バイトで内容までは書いてなかった。『カンボジアに行って』と言われて、『分かりました』という感じで。そのときちょっとお金に困ってたので行こうかなと思った」
こう話すのは、福岡県内に住む男性です。“高額報酬”を謳うSNSの求人に応募し、3月にカンボジアへ渡航。「すぐに帰ってこられるだろう」そんな軽い気持ちで、家族には「派遣の仕事」と伝えていました。
カンボジアの首都・プノンペンに到着した男性は、迎えに来た人物の車に乗せられます。そのままタイとの国境に近い街のホテルに連れて行かれました。
カンボジアで被害 福岡県在住の男性
「このまま帰るのかなと思ったら、全然違う方向に行った。どこに行っているんだろうと思いながら、気が付いたら全然違う場所にいた」
そこは、カジノなどを隠れ蓑にした特殊詐欺の拠点が乱立する街でした。男性は詐欺組織に送り込まれたとみられます。
秘匿性の高い通信アプリで、2〜3人の勧誘役と連絡をとっていたという男性。現地では複数の案内役がいたほか、ホテルには4人の見張り役などがいたそうです。
カンボジアで被害 福岡県在住の男性
「日本語を話せる人もいた。日本人だと思う。中国人もいました。早く帰りたいなと思っていたが、逃げようにも逃げられるような感じではなかった。とりあえず言う通りにしていた」
男性は、そこで1か月以上にわたって監視下に置かれました。
この間、実際に詐欺行為を強要されることはありませんでしたが、組織の人物からスタンガンを見せられ、抵抗すれば電気ショックなどの暴行を加えると脅されたといいます。
その後、男性は隙をみてホテルを脱出。プノンペンに戻ったところで現地当局に保護されました。現地当局は、男性について「人身取引の被害者」と発表しました。
カンボジアで被害 福岡県在住の男性
「もう頭がずっと真っ白で、常に誰も見ていないかとか、誰も信じられない状態になっていた。本当に見つかったら死ぬかもしれないし、怖かったのは怖かった」
大使館「ほぼ毎日のように相談」狙われる日本人
現地の日本大使館には、カンボジアで消息を絶った日本人に関する相談などが相次いでいます。
在カンボジア日本大使館 植野篤志 大使
「『自分の家族・友人がカンボジアに行ったまま連絡が取れなくなった』『捜してほしい』という相談・問い合わせが、ほぼ毎日のようにある状況。現地当局と連携して日本人を救出できるように、大使館全体で全館体制でこの問題に対応している」
このような人身取引の被害は、日本人だけの問題ではありません。
インドネシア大使館には、各地の詐欺拠点から逃げ出した大勢の人たちが駆け込んでいました。
詐欺拠点から脱出 インドネシア人
「(詐欺拠点で)ひどい拷問を受け、死ぬかもしれないと恐怖を感じ逃げた。早く帰国したい」
世界各国から集められた、かけ子らが監禁状態に置かれ、欧米メディアから“詐欺帝国”とも呼ばれるカンボジア。
中国系犯罪組織などによる大規模な国際詐欺拠点が数多く存在していましたが、いま、現地の状況は大きく変わりつつあります。
“詐欺帝国”カンボジアで進む“詐欺拠点の撲滅作戦”
国際的な圧力の高まりを受け、カンボジア政府は2025年から“詐欺組織の撲滅作戦”に乗り出し、多くの大規模拠点が摘発されました。
2025年11月に訪れたプレイベン州の巨大な詐欺拠点は、日本人を含む2万人近くのかけ子らが収容されていましたが、2026年6月、改めて取材してみると...
記者
「こちらはカンボジア国内でも最大級の特殊詐欺拠点とされていた場所です。今は当局の摘発を受けて、中には誰もいなくなっていて静まりかえっています」
拠点は閉鎖されてもぬけの殻となり、現在は地元警察が管理していました。
一方、プノンペン郊外の空港では、詐欺拠点で摘発された様々な国籍の外国人が、連日のように強制送還されています。
撲滅作戦を指揮するカンボジア政府の高官は、JNNの単独インタビューに対し、取り締まりの成果をこう強調しました。
カンボジア政府 オンライン詐欺対策委員会 チャイ・シナリット上級相
「我が国の法律には確かに抜け穴が存在していましたが、(詐欺対策)の法整備を進め、明確な戦略を打ち出しました。(これまでに)400か所以上の詐欺拠点を摘発し、100%といっても過言ではないほど、詐欺拠点の壊滅が進んだと確信している」
周辺国へ拡散… 東南アジアで広がる詐欺拠点
ただ、国際人権団体「アムネスティ・インターナショナル」は、一部で警察と犯罪組織の癒着が続いているなどと指摘。中国系の詐欺組織とのつながりがある関係者は、上層部の多くが野放しになったままだと明かします。
中国的詐欺組織 関係者
「(当局者が)事前に『拠点が摘発されるから、捕まりたくなければ先に引き揚げなさい』、『拠点を撤収するか、別の国へ移りなさい』と組織に知らせるようなケースは今でもあります」
この関係者が見せたのは、カンボジアからラオスに拠点を移したという中国人幹部からのメッセージ。
中国的詐欺組織 関係者
「これは『ラオスで働く人を募集している』という内容。組織はただ拠点を他の国へ移し、再び活動を拡大しようとしているだけ」
カンボジアで取り締まりが強化された詐欺拠点でしたが、最近はラオスやインドネシアなどでも日本人を含む詐欺組織が活発に動いているとみられ、東南アジア全域に広がろうとしています。
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