
氷を無性に食べたくなる衝動に駆られたことはありませんか?実はこれ、単なる癖ではなく「氷食症」という病気かもしれず、注意が必要なことがあります。口の健康に詳しい伊東歯科口腔病院(熊本市)の歯科医師・廣瀬知二さんに、意外と知られていない症状について、詳しく聞きました。
【写真で見る】SNSで“氷食症の人が好む”という氷(イメージ)
「氷を食べずにいられなくなってしまう」が病気のサイン?氷食症とは
廣瀬さんによると「1日に製氷皿1皿以上を続けて毎日食べているような方が氷食症と言われ、氷を食べずにいられなくなってしまう」といいます。
氷食症は医学的には「異食症」の一種。異食症とは、栄養価のないものを強迫的に食べてしまう症状です。海外では土や髪の毛を食べる異食症も報告されていますが、日本では氷を食べる「氷食症」以外の異食症はめったに見られないということです。
氷を食べ続けると、歯が折れてしまったり、すり減ったりしてしまいます。また、あごが痛むなどの「顎関節症」が誘発される恐れもあります。
なぜ氷を食べたくなる?その原因は「解明されていない」
氷食症の原因は完全には解明されていませんが、例えば、口の中で灼熱感を感じたり、体内のイオンバランスが崩れたりすることが関係しているという説もあるそうです。
最も有力な説は「鉄欠乏性貧血」との関連です。
氷食症は思春期や40代の女性に多く見られ、その場合、鉄欠乏性貧血が疑われます。鉄欠乏性貧血の原因を調べると、婦人科系の疾患での出血があったり、痔や潰瘍性大腸炎だったというケースもあるといいます。
特に思春期の女性だと、こっそり隠れて氷を食べる傾向があるので、医師には「歯が折れた・欠けた」「顎の関節がおかしい」と相談するものの、聞き取りの中で「硬いものを食べすぎていないか」「カリカリするものを食べていないか」と聞くと、「氷をたくさん食べてしまう」という話が出てきたこともあるということです。
疫学調査はないということですが、鉄欠乏性貧血による「氷食」は“暑いから”などの季節に関係なく続くと考えられているということです。
【もしかしたら氷食症かも?チェックリスト】
□1日に製氷皿1皿以上、氷を食べる
□少なくとも1か月以上にわたり、毎日大量の氷を食べている
□暑さを感じていなくても、氷を食べたくなる
□氷を噛み続け、歯に痛みを感じている
□めまいや貧血症状がある
□寝つきが悪い
□口の中の温度が高く、冷たいものを欲する
氷をたくさん食べる→「貧血」かも “自覚のない出血”がある場合も…
「氷をたくさん食べてしまう」となった時、まず疑うべきは「鉄欠乏性貧血」で、治療法としては、内科や血液内科を受診して鉄剤を処方してもらうのが基本だといいます。手当てをすると割と早く良くなり、鉄分の不足さえ満たされてしまえば「氷なんて、何だったんだろう」というくらいに治るということです。
ただ、中には「自覚のない出血」があって、氷を食べている場合もあるということです。
「『氷を食べる』ということは『鉄分が足りていない』ということ。表面に見えていない、自覚のない出血がある時には、病気が隠れている場合があります。氷を異常に食べたくなるということは、体からのサインかもしれません。気になることがあれば受診してほしい」と廣瀬さんは話しています。
もし、自分や家族が氷を無性に食べたくなる症状がある場合は、単なる癖と軽視せず、体からのSOSかもしれないと考え、専門医に相談することが大切です。早期発見・早期治療で、氷食症は改善することができます。
取材:TBSテレビ コンテンツ編集部・小林 愛
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〈プロフィール〉
廣瀬知二さん
伊東歯科口腔病院
訪問診療部長
歯科医師
昭和60年 北海道医療大学歯学部卒
平成元年 広島大学大学院歯学基礎系歯科理工学専攻修了
歯学博士
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