“働き方のイマ”に注目する「work23」第8弾のテーマは「定年70歳」です。「人生100年時代」といわれるなか、“70歳まで働くのが当たり前”。そんな時代がやってくるかもしれません。みなさんは、何歳まで働きたいですか?
生涯現役?いつまで働く? 街の人は
飲食と音楽系 アルバイト(26)
「理想は65歳まで働いて、ゆっくりその後は出来たらいいなと思う」
映像制作・監督 会社員(37)
「生涯現役がいい。やりがいがなかったら、仕事やる意味なくないですか?(仕事が)楽しいから」
建設業営業 会社員(28)
「働くのは50代までで終わらせたいなと。いつまでも満員電車に乗って働くのは厳しい」
保険営業 会社員 (58)
「年金をもらえるのが65歳から。とりあえずそこまで身体が動けば働きたいかな」
デンマーク“定年70歳へ”
70歳までの就業機会確保が"努力義務"となっている日本の企業。一方、定年を70歳と決めた国も。北欧・デンマークです。
保育士として働く、ミー・ラスクさん(38)。5月、議会で可決された法案に不安を感じています。
デンマークの保育士 ミー・ラスクさん
「もっと早く退職できたらいいなと思っています。年金制度の現状が心配です」
デンマーク議会は、定年退職の年齢を現在の67歳から、2040年までに70歳に引き上げる法案を賛成多数で可決しました。定年と同じ時期に設定されている年金の支給開始年齢も、段階的に引き上げられます。
退職年齢を平均寿命に連動させ、5年ごとに見直しているデンマーク。「70歳」の定年は、ヨーロッパでも最高齢となります。
デンマーク最大の労働組合のチーフ・エコノミストのデイモン・アショーニアさんは「引き上げのスピードが早すぎて、支援が追いついていない」と指摘します。
デンマーク労働組合総連合 デイモン・アショーニアさん
「労働者の3分の2が肉体的疲労などで早期退職している。労働者が新たなスキルを習得し、身体的に負担の少ない仕事を見つけることができるようにする必要がある」
“定年70歳時代”が到来⁉
定年を70歳にしようという動きは、日本の企業でも。
明治安田生命保険 監査部 主席内部監査役 宇都暢尚さん(62)
「70歳を目標に働きたい」
「明治安田生命保険」では、2027年度から現在65歳の定年を70歳に引き上げる予定です。宇都さんについて他の社員は…
入社3年目(20代)
「(宇都さんから)若いということで、デジタルの話とか質問よくあがるので、生成AI使って業務効率化だったりというところが私もできればなと」
若手社員から学ぶ一方で、自身の体のメンテナンスも欠かさない宇都さん。
宇都暢尚さん(62)
「この歳ですけど、エアロビをやっていて、あとはシャドーボクシングをやっている」
同じ役割や同じ仕事を担う場合、給与水準は維持されます。
宇都暢尚さん(62)
「年金だけだと、減っていくのみということろもあります」
また、ファスナーメーカー大手の「YKKグループ」は2021年に定年を廃止しました。
定年の延長や廃止の動きに街の人は…
会社員 (32)
「給料はあまり下がらない方が、長く働こうかなというモチベーションにはつながる」
会社員 (31)
「身体が動くうちは、何でもいいから仕事をしていないと、認知症になったりとか、そういうことが心配」
“給料そのまま” 定年引上げ進むか
小川彩佳キャスター:
何歳まで働きたいか、街で80人に聞いた結果がこちらです。10代~30代は青、40代以上は赤いシールを貼ってもらいました。
【何歳まで働きたい?】
75歳超:3人
75歳:8人
70歳:15人
65歳:21人
60歳:21人
60歳未満:13人
比較的若い人があまり長く働きたくないという傾向がある結果になっています。藤森さんは会社員としていかがですか。
藤森祥平キャスター:
46歳、会社員です。できればとことん仕事をやり尽くしたいと思っています。しかし、日々チャレンジしているわくわく感や、職場が自分を必要としていることを感じることができないと、働けないですね。会社員として働くかどうかのこだわりは、そこまでありません。
伊沢拓司さん:
どこで働くかというよりも、自分が求められてることって生きがいで、自分もそういう環境で働いてきたので、それが途切れることが生きているうえで「怖い」という感覚があります。
小川キャスター:
そして、もうひとつ重要なのが給料だと思います。定年後の働き方として、令和6年度経済財政白書によると、半数近くの企業が定年前の6~7割に給料は下がるといいます。ただ、労働政策研究・研修機構によると、仕事内容は「同じ」という会社が7割強となっており、同じ仕事でも給料は下がってしまいます。
この傾向は、今後も続いていくのでしょうか。
教育経済学者 中室牧子さん:
企業には、定年を廃止する、定年を延長する、いわゆる再雇用をするという3つの選択肢があると思います。今は、仕事内容は同じだが、給料は下がるというパターンで再雇用をしている企業が大半なので、残念ながら定年を廃止したり、同じ給与のままで定年を延長したりする企業は、少数派だと思います。
なぜ、企業が定年の延長や廃止を嫌がるかというと、結局のところ定年とタイミングでしか、スムーズな雇用の終了ができないからです。
解雇規制の問題は、以前の自民党総裁選でも議論になり、年金の問題も今国会で議論されてますが、定年の延長や廃止を考えるときには、この解雇規制の問題や年金の問題とセットにして、議論しなければいけないのだと思います。
仕事を引退すると心疾患リスクが下がる?
小川キャスター:
現役の世代は、再雇用についてどう考えているのでしょうか。
「経験が豊富などで困ったときにアドバイスがもらえる」(50代)
このような声もある一方で…
「なかなかダメ出しが出来ない」(30代)
「デジタルに疎いので資料はデータではなく紙で渡す」(40代)
「『昔はこうだった』と言って昔の方法を押し通そうとする」(30代)
このような声もありました。
伊沢拓司さん:
逆に若い世代に駄目出しできないという人もいるので、世代をくくって答えるのがすごく難しいなと思います。ただ仕組みの面で、定年の延長と年功序列制度がセットになると、若い世代からすると、「上のポストが空かない」という感覚にはなりますよね。
これは世代論を超えた仕組みの問題だと思います。定年を延長するとなった場合には、ポストの与えられ方や評価に関するシステム作りは、社内でやり直す必要があるのかなと思います。
小川キャスター:
上の世代では「肩身が狭い思いをしながら長く働かなければならないのか」という意識が出てくるのではないかと思います。
教育経済学者 中室牧子さん:
慶応義塾大学の研究グループによると「仕事を引退すると健康にどう影響するのか」という調査で、仕事を引退すると、▼心疾患のリスクが2.2%ポイント下がる、▼身体不活動のリスクが3.0%ポイント下がるということが明らかになっています。
これは37か国約10万人のデータを解析したものですが、長く働くことは、その分、健康のリスクを抱えることにもなります。心疾患のリスクが2.2%ポイント減少するということは、日本の60~69歳の就業者が全員引退した場合、心疾患の患者が約20万人減るということになります。
高齢者になると座ったままで仕事をする人が多いので、仕事を続ける場合は、意識的に運動することがとても大切です。
小川キャスター:
また必ず病気や介護などで「働きたくても働けない」という事情を抱えた方々の、不利益にならないような制度設計というのも必要だと感じます。
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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者
教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」
伊沢拓司さん
株式会社QuizKnock CEO
クイズプレーヤーとして活躍中
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