
東京2025世界陸上代表に内定している三浦龍司(23、SUBARU)が単独取材に応じた。8分03秒43と自身の日本記録を6秒以上も更新し、2位に食い込んだダイヤモンドリーグ・モナコ大会(7月11日)を振り返り、3000m障害ならではのレース戦術やテクニックを駆使していたことを明かした。また2大会連続入賞がかかる世界陸上(9月13日開幕)のレース展開について言及した。
【一覧】9月13日開幕『東京2025世界陸上』日程&出場選手
8分03秒43というタイムについて
Q.これまで8分3秒という数字に対して、どんな記録だとイメージしていたでしょうか
三浦選手:
8分3秒はすごく嬉しかったですし、そのレースで2位になれたことにも手応えを感じられました。満足感の大きいレースでしたね。近年(22年以降)は8分5秒前後が多く出ています。そこが1つ(以前の自分より)レベルの高いタイム帯だと思っていたので、8分3秒は世界のトップレベルに食い込むタイムだと感じています。
▼8分5秒未満のシーズン別人数とシーズン別世界最高記録
2019年:3人(8分01秒35)
2020年:0人(8分08秒04)
2021年:0人(8分07秒12)
2022年:2人(7分58秒28)
2023年:3人(7分52秒11)
2024年:5人(8分01秒63)
2025年:4人(8分00秒70)
Q.次は7分台を、と我々はどうしても期待していますが、そんな簡単な数字ではないと長門俊介コーチ(順大駅伝監督)は慎重でしたが
三浦選手:
サンショー(3000m障害)の歴史を見ても、突破している選手が少ないレベルの高い記録です。そこは大きな大きなハードルはあるのかな、と思います。しかし目標としては、ゆくゆくの目標ですが、7分台を出したいですね。モナコは、そこに近づいていける結果になりました。
Q.21年東京五輪7位、23年ブダペスト世界陸上6位、24年パリ五輪8位と入賞してきましたが、世界陸上への自信も大きくなりましたか
三浦選手:
自分のなかでも自信がつきましたし、入賞など今までの結果以上を出すことの現実味が帯びてきたと思います。それに弾みをつけるいい大会だったと思います。
レース中の障害、水濠を視界に入れるテクニック
Q.パリ五輪金メダリストのS.エル バカリ選手(29、モロッコ)が世界記録(7分52秒11)ペースで走り、集団は縦長になりました。そして最後はエル バカリ選手がペースダウンして、三浦選手がラスト1周で一度は逆転しました。長門コーチはエル バカリ選手を目標に走れたことが、大きな記録更新につながったと見ていますが
三浦選手:
(ペーシングライトの)ペース設定が7分52秒と8分0秒だったので、自然と縦長の集団になると予想していました。エル バカリ選手のことは視界に入っていなかったんですが、ラスト1周で集団から抜け出すと差がそれほど大きくなかったんです。それに気づいた時はもうスパートをかけていて、このペースで行ったら追いつけるかもしれない、ワンチャンあるかな、と感じながら走っていました。しかしエル バカリ選手は世界記録を出せないと判断した時点で、勝つことに切り換えていましたね。残り100mを切って抜きましたが、エル バカリ選手には余裕がありました。抜き返されるかな、と感じました。
Q.視界にいきなり障害が入ってきても対応できるのが三浦選手の強さの1つですが、今回は障害を見やすい良い位置取りができたのでしょうか
三浦選手:
後方からレースを進めて、自分のリズムで障害や水濠を迎えられる位置取りができました。特に今回は水濠の位置が、第3コーナーを左に曲がってすぐの距離に設置されていて、前日の下見の段階でいつもと違う状況が予想できました。
Q.水濠の位置の違いにどう対処したのですか
三浦選手:
集団の内側に位置取りをしていると、第3コーナーを左折した後の走るスペースや水濠を越える場所が限られてきます。外側にコースを変えることもできないわけではありませんが、それをすると他の選手と接触するリスクが生じます。海外の選手はそういった細かいところを気にしないかもしれませんが、僕としては結構な違いになる、走りづらくなると予想しました。それに加えて今回は、出場選手も約20人と多かったことが懸念材料でしたね。ハイペースになると縦長の集団になっても、大人数の集団になることや水濠の位置がいつもと少し違うことなどを考えると、跳ぶリズムを確保するために、あえて外側から行って水濠が視界に入る位置を確保しながら走りました。
東京五輪で入賞した国立競技場で成長した姿を
Q.エル バカリ選手には勝てませんでしたが、昨年のパリ五輪銀メダルの選手と銅メダルの選手には勝つことができました。五輪で2大会連続入賞した選手も、エル バカリ選手と三浦選手の2人しかいません。世界のトップに完全に定着しましたが
三浦選手:
昨年今年と新しくサンショーに出場してきている選手たちもいます。パリ五輪で入賞してきた選手たちなので侮れませんが、ずっと手堅く走ってきた選手たちもいます。東京世界陸上でも入賞してくると思いますし、決勝のレースではキーマンになるかもしれません。そういった(新旧の)選手たちの走りに対応する必要があります。
Q.ダイヤモンドリーグが選手にとって記録も狙う大会なのに対し、世界陸上や五輪で選手が考えるのは勝負だけです。世界陸上のレース展開はどうなると想定していますか
三浦選手:
予選の展開は本当にわかりませんが、実力のある選手が支配権を握って、彼らが安心して着順を取れる、決勝に進める展開にしていくと思います。決勝はもうサバイバルレースですね。ペースの上げ下げ、前半のレースの動き方、後半の動き方、そういったものは正直、レースが始まってみないとわかりませんが、どんな展開になっても付いて行かないといけません。思い切りが必要になることもありますし、状況を読んだりする冷静さも必要です。
Q.レース中の判断力は上がっていると言えそうですか
三浦選手:
ダイヤモンドリーグは後方からスタートして、後ろから前の景色を見ながらレースを進めています。(スピードを上げるなど)行くべきところか、逆にこらえるべきところか、常々判断してレースを進めてきました。世界陸上と五輪で入賞もできましたし、タイムも自己ベスト付近で何度か走ることができたので、レース中の判断力は上がっていると思います。その中でも今回の記録は、水準が一段階上がったととらえていいレベルです。僕の中でも1つ目線が上がったような感覚で走れると思います。
Q.4年前の東京五輪で、当時は大学2年生でしたが7位に入賞したのが国立競技場です。同じ会場で、どんな走りを見せたいですか
三浦選手:
成長できていることを見せられる走りをしたいですね。4年前に走った時とはまた
違う、(当時の日本記録を出した)予選ではなく、決勝で勝負できる姿を見せることができると思うので、そういった走りをしっかりしたいと思います。決勝のレースで叩き合いになった時に、上位で走っている姿を見せたいですね。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)
※写真はダイヤモンドリーグ モナコ大会 男子3000m障害の三浦選手(左)とエル バカリ選手(右)
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