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「成果なく悪い展開ばかり」トランプ政権100日で見え始めた限界と未来【Bizスクエア】

経済
2025-05-01 07:00

4月29日でトランプ大統領就任から100日となった。政権発足直後から矢継ぎ早に政策を打ち出すも、多くの政策で国民からは低評価という調査結果も。果たして今後の展望は?


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迷走する「トランプ関税」

「アメリカの⻩金時代が今始まる」


1月20日の就任式でこう話したトランプ氏が最初に取り掛かったのは、【不法移民の強制送還】だ。


トランプ大統領(1月24日):
「我々は悪質な犯罪者を排除している。こいつらは殺人犯だ。こいつらを最初に送還する」


ロイター通信によると、就任から1か月で3万7660人の不法移⺠を強制送還したという。


そして、トランプ氏が世界の国々に向け放ったのが【関税の集中砲火】


▼2月4日の中国への追加関税を皮切りに、カナダ・メキシコにも
▼品目別では「鉄」「アルミ」「自動車」も対象に
▼4月2日、貿易相手国に対する一律10%+非関税障壁などを考慮した上乗せ分の「相互関税」を発表


しかしインフレと景気後退への懸念から相互関税発表翌日のダウ平均株価は一時1700ドルあまり下落。
結局、発動から13時間後に突然上乗せ分の関税を90日延期すると表明した。


終わらぬ「2つの戦争」

一方、「就任後24時間以内にウクライナ戦争を終わらせる」と就任前に豪語していたトランプ氏だが、ロシア・プーチン大統領との交渉はうまくいっていない。


もう1つの戦争ガザをめぐっては2月、トランプ政権はガザの住⺠を別の場所に強制移住させた上で、“アメリカがガザを所有する”と主張


トランプ氏がSNSに投稿した<ガザ、次はどうなる>と題した動画には、♪トランプ・ガザ・ナンバーワンという歌とともに、リゾート化した“将来像”のガザのビーチでくつろぐ人や巨大な黄金のトランプ像などが映っている。


しかし、その映像とは裏腹に3月18日にイスラエルが停戦合意を破り、ガザへの攻撃を再開するなど和平への道筋は全く見えていない。


トランプ政権100日「褒められるものが1つもない」

アメリカでは、大統領就任から100日間は“ハネムーンピリオド”と呼ばれる。
共同通信・元ワシントン支局長の杉田さんによると、今後の政権運営の基盤となる特別な期間だという。


『共同通信』客員論説委員 杉田弘毅さん:
「100日間は野党もそんなに攻撃しない。政権に色んな政策をやらせて様子見というか、あまり邪魔をしない。なので、ここでどれだけの成果をあげられるか、あるいは成果に向けてスタートダッシュできるかということは大統領の評価の第一段階」


では、杉田さんはトランプ氏の100日をどう評価するのか。


杉田さん:
「トランプ氏がやった政策で良いもの、強いて言えば褒められるものが一つもない。どれもこれも本人が想定していた成果をあげられず、悪い展開になっている。米国民が望んでいたものも成果があげられていない」


【支持率】も下落傾向にある。
政権発足直後は「支持する」が「支持しない」を上回っていたものの、2月には逆転。
4月24日時点で▼支持する⇒ 45.3%▼支持しない⇒ 51.0%と、不支持が半数を超えた。(※Real Clear Politicsより)


1期目とは全然違う「株価」の動き

国民の【政策別の評価】でも、主要6項目のうち移民政策以外は「気に入っていない」が上回る。
(※Pew Research Centerより ※気に入っている=○/気に入っていない=✕)


▼移民政策⇒「○20%」「✕11%」
▼トランプ政権の統治⇒「○11%」「✕22%」
▼政府予算の削減⇒「○9%」「✕11%」
▼関税・貿易⇒「○6%」「✕15%」
▼その他の経済政策⇒「○3%」「✕6%」
▼外交⇒「○2%」「✕4%」


杉田さん:
「移民政策は映像などで、見た目で犯罪を犯しているようなイメージの人々が捕まって飛行機に乗せられて外国に行く。そうするとアメリカ国民はこれで国が安全になったなというイメージを持ちやすい。ただ人権問題や、本来強制退去対象ではない人を送ったりしているので実は大変な問題をはらんでいる政策


――トランプ氏に期待していた経済、貿易・関税では<気に入っていない>の方が多い

杉田さん:
「そこがトランプ氏に対する失望の一番大きなところで、『バイデン前大統領よりは経済政策をうまくやれるだろう』ということで選ばれたわけだが、蓋を開けてみたら全然良いことがないということで株価も下がった」


就任後60日ほどの【ダウ平均株価】の推移を、1期目と比較すると
▼1期目(2017年)⇒トランプ氏当選で米金利・株式・米ドルが急上昇した「トランプラリー」で上がり、高値をキープ
▼2期目⇒就任から20日ぐらいから下落傾向に


杉田さん:
「アメリカでは大体6割ぐらいが何らかの形で株をやっていると言われているので、株価下落はすごく痛い。期待していた経済で予想に反して駄目だったということになるとトランプ氏の支持率はこれからどんどん下がっていくことになる」


政権の「2つの狙い」に見える限界

トランプ政権の“狙い”としては
▼3つの赤字解消(貿易・財政・家計)
▼国内製造業の再興⇒中間層の所得を底上げして格差是正


杉田さん:
“2つの狙いを一挙に解決できるのが関税”だというが、どれも簡単に解決できる話ではない。関税がどう落ち着くかわからず【貿易赤字】がどれだけ解消するのかは大きなクエスチョン。【国内製造業の再興】はトランプ政権1代でできる話ではないし、そもそもアメリカ人が付加価値の高いものを製造業として工場で作ることに今向いてるのかどうなのか」


杉田さんによると、日本の製造業のトップ達は「今アメリカに大きな工場を作ることは考えられない」と言っているという。


杉田さん:
「高すぎる人件費に見合うだけの技術を持つ労働者が集まらない。さらに物価も何も高いということもあり、やはり当面は諸々条件が良いところで作ったものを関税を飲み込んで何とかアメリカに輸入すると。このパターンを続けるしかないと。なので【国内製造業の再興】というのは今の企業経営している人の常識からするとあり得ない話」


――国内製造業を再興し中間層の底上げをするには、本来は細かな産業政策や社会政策、地域政策などのミクロの対策、もっと言えば国内の分配政策が必要。

杉田さん:

「【産業政策】は本当に下から積み上げて地域ごとの事情を考えて作っていかないとダメだが、トランプ氏はそういう発想をしない。【分配政策】は共和党支持層から『民主党か』と反発を受けるので嫌がる。さらに言うと【教育】や【職業訓練】も手をつけなければいけないのに、トランプ政権で誰かが責任を持ってやっているのか全然見えてこない」


対中関税「腰砕け」の兆し

さらに関税政策の手詰まり感を一番表しているのが、対中国だ。
▼アメリカは中国に145%の関税
▼中国はアメリカに125%と、事実上の禁輸状態になっている。


――中国が一歩も譲歩しないうちに、アメリカは145%⇒50~60%程度への引き下げを検討との報道もある。

杉田さん:

「関税合戦の本丸は中国なのに、事実上何も進んでない状況だと思う。中国との交渉を誰がやるのか。1期目はライトハイザー通商代表と中国の劉鶴副首相が交渉していい勝負になった。今回は誰がやるのかもさっぱりわからず、体制もできてないというのが現状だろう」


「水と油」2つの派閥の戦い

また、関税政策がちぐはぐになっている背景には、関税や対外政策に関して「水と油」のような正反対の2つの派閥が関係しているという。


【市場重視派】⇒ベッセント財務長官・ルビオ国務長官
【MAGA派】⇒ナバロ通商製造業担当上級顧問・ラトニック商務長官


関税政策はMAGA派に乗っかり進められたが、“トリプル安”の発生でベッセント氏がトランプ氏を説得。相互関税の上乗せ分は一時停止となり、現状では関税に関してベッセント氏が前面に出ることで市場は落ち着きつつある。
ただ、MAGA派の“巻き返し”の可能性も十分考えられるという。


杉田さん:
「関税といえば第1期政権以来ナバロ氏が自分のイシューだということでずっとやってきたが、ベッセント氏に取られてしまった。ナバロ氏はトランプ氏とも最近は協議できてないようで、ベッセント氏を潰すためにこれから色んな仕掛けをしてくると思う」


掲げた「経済対策」総崩れの可能性も

なんとも危うい基盤の上にのるトランプ政権だが、今後のポイントは何なのか。


杉田さん:
「ズバリ言うとベッセント氏がいつまで生き延びて、そしていつまでトランプ氏がベッセント氏の話を聞き落ち着くところに落ち着かせられるかということ。それができなくなると、ナバロ氏・ラトニック氏あたりがまた力を持ってくるので、そうするといろんな乱高下がまた起きてしまう」


――本当は早めに関税の話を終えて、減税延長や規制緩和でV字回復して中間選挙へというシナリオなのだろうが、今後の大きなカギはやはり関税交渉か。

杉田さん:

関税で歳入が増えるという担保がない限りは減税の延長ができない。共和党の中には財政均衡派もいるので減税延長が本当に実現するかどうかはちょっと見もの。もし減税延長が実現しないとなると、トランプ政権が掲げた経済課題は全て総崩れになってしまうということ」


(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年4月26日放送より)


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