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「ドル高是正の要求なし」日米財務相会談でアメリカが“大人の対応”を取ったワケとは?【Bizスクエア】

経済
2025-05-01 06:30

アメリカのトランプ政権が貿易赤字の縮小を目指して高関税政策を続けるなか行われた日米の財務相会談。「ドル高是正」の要求はなかったが、加藤大臣の発言から読み解く日米の一致点とは。


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約50分間で何が話し合われた?

トランプ大統領(23日):
「日本は円安を目指して戦ってきた」


ドル高の是正を一貫して主張しているトランプ大統領。


24日に行われた加藤勝信財務大臣とベッセント財務⻑官の会談では、為替を巡りどのようなやり取りが行われるか注目されたが、約50分間の会談の中で具体的なドル・円相場の水準などの話はなかったという。


加藤財務大臣:
「アメリカから為替の水準や目標、管理する枠組みといった話はまったくなかった


そのうえで、
▼「為替レートは市場で決定される」
▼「過度な変動は経済に悪影響を与える」という認識を両国が再確認したとのこと。


具体的なやりとりの中身についてはコメントを避けたものの、つまりは
【為替目標・管理の要求なし】⇒円高誘導のようなことは、とりあえずやらない
【為替相場は市場で決定と再確認】⇒現状の“緩やかな是正”で良い
という認識で一致したということだ。


さらに、加藤大臣の発言には注目点もある。


加藤財務大臣:
「現在進行中の日米の貿易交渉に関連しては、為替に関して引き続き緊密かつ建設的に協議を続けていくことで一致した」


▼「日米の貿易交渉に関連」⇒通常、為替の話に「貿易交渉」は関連付けない
▼「建設的」⇒為替に関する声明には馴染まない言葉


これらの点から何が読み解けるのか?為替ストラテジストの花生さんに聞いた。


『バルタリサーチ』社長 花生浩介さん:
「為替の立場からすれば、もう日本政府は通貨安政策をとってないが、それで終わりではなく『これからそのパフォーマンスについてレビューしていきますよ』ということ。それを貿易交渉に繋げるのは非常に難しいが、できればアメリカの貿易赤字を減らしたいと。それと為替が整合的であるということはやはり強調していると思う」


つまり、アメリカの貿易赤字削減の目的を踏まえ為替について協議をしていくが「建設的」=弊害が出ないような形で進めていくということだという。


また「トリプル安」で朝令暮改

一方、金融市場はトランプ氏の発言にまたもや振り回された。


FRB(連邦準備制度理事会)のパウエル議長に「早期退任」を要求していたトランプ氏は、21日にもSNSで<Mr.Too Late(遅すぎる男)>と揶揄するなど圧力を強めた。


この中央銀行の独立性を脅かそうとする言動でドルが売られ、日本時間22日の円相場は一時1ドル139円台と、2024年9月以来の円高水準に。


さらにインフレ懸念から債券も売られ、通貨‧株式‧債券安の「トリプル安」の状況になるとトランプ氏は「利下げしなければパウエル議長は終わりかと言われればそうではない」(22日)と一転して解任を否定。
円相場は前日から3円近く円安が進んだ。


会談で日本が「問われたこと」

こうしたトランプ氏の言動による「金融市場の動き」も財務相会談に影響したと花生さんは指摘する。


――アメリカの本音は「円安ドル高の是正」だが、為替の特定な水準をめざすといった大がかりな合意にはならなかったのはなぜか?


『バルタリサーチ』社長 花生浩介さん:
「一番の理由は、やはり直近で少し金融市場がぐらついたこと。一部には色々お金が逃げ出したとかいう話もあるが、それをさらに誘発するようなコメント等々は避けるのが、日本もそうだがアメリカにとっても国益にかなうだろうというのは当然あったと思う」


――ベッセント氏からは、今の為替相場に対する不満などが表面的にはでてきていない。これは現状の緩やかな“円安是正”のようなものをアメリカは追認しているということか。

花生さん:

「ある意味で追認していると思う。ただし、じゃあもうこれでいいかというと、マイルドな表現だがG7の為替合意(※2017年・為替介入は過度な変動の場合に限るとした合意)を遵守してやってくださいよと言っている。なので、問われるのは他のG7諸国と比較して、日本は“正当化できる結果”を残しているのかだと思う」


円安水準「まだ努力が足りていない」

例えば、円の状況ー。


2022年のウクライナ戦争開始以降の【為替の動き】を、複数の主要通貨に対するドルの総合的な強さを指数化した「ドルインデックス」と比較すると


▼ドルインデックス⇒2022年はインフレが進み金利を上げたことでドル高が進むも、2025年はウクライナ戦争開始頃の水準に戻っている
▼ドル円⇒円の独歩安が大きく進展し、2025年もかなり安い水準


花生さん:
「ドルインデックスをG7の水準と仮定すると、『日本はまだ努力が足りない』と言っていることに等しいのではないかと。日本はもう通貨安政策は取ってないと言ってるが、トランプ氏は『中国と日本は為替を操作している』と言っている。ただ、この為替の動きを見る限りは、トランプ氏の言っていることの方が正しいかなと言えなくもない」


「物価上昇」と「金利」で問われること

さらに他にも、日本が「努力不足」と言われかねない数字がある。


【日米の消費者物価指数】(総合・前年同月比)
▼アメリカ⇒2022年6月に9.1%と大きく上昇するも、2023年6月以降は3~4%を推移
▼日本⇒2021年にマイナスから脱却し、2023年1月に4.3%に。その後は2~4%を推移
2025年3月は【アメリカ⇒2.4%】【日本⇒3.6%】と今や日本の方が物価上昇率が高い


花生さん:
「日本は過去2年以上にわたって2%を超えているし、ほぼ欧米と同じ水準だと。そういう状況で、『じゃあそれを抑える努力をやっているのか』というのはやはり問われると思う」


【日米の10年長期金利】
▼アメリカ⇒4.235%(4月25日)
▼日本⇒1.343%(同日)


――日本の金利はまだ1%台。これは経済の状況にあったマクロ政策を取っていない、歪みがあるということになるのか?

花生さん:

「日本の低金利の背景に異次元の金融緩和があったことは確かで、もちろんそれから脱却しつつある。しかし対応も遅れているし、まだこれで終わりというわけじゃないよということを日米の金利差は如実に表している」


「円安是正」どの程度まで?

では、円安是正はどの程度までが視野に入ってくるのか。


花生さん:
「ドル円はウクライナ戦争勃発前後から上昇している。一方ドルインデックスはもう戦争勃発時の水準に戻っている。そういうことでいうと実は120円とかが視野に入るが、バランスの問題でもあるし、スピードの問題でもある。なので当面は【130円台前半から中盤ぐらい】が一つのターゲットになるのでは」


「覇権国」と「ドル安」両立できる?

トランプ政権は赤字削減のためにドル安を望みながら、一方でドルの基軸通貨体制は絶対譲らないという姿勢だ。
<強いアメリカ>と<弱いドル>の両立は可能なのだろうか?


共同通信・元ワシントン支局長の杉田さんに聞いた。


『共同通信』客員論説委員 杉田弘毅さん:
「彼らは希望的観測で両立するということで動いているが、今回の関税発動直後の色んな動きを見ると、やっぱりそれはちょっと難しいねと。少しでも国債が売られたような気配があったり、ドルが弱含むとすぐに関税を一時停止している。そしてどちらを取るかというと、<ドルの基軸>だと思う。アメリカの世界での覇権を支える大きな柱は、やはりドルなので、そこは崩したくないという本音が出てくると思う」


「第2のプラザ合意」できないワケ

また、第2のプラザ合意(マールアラーゴ合意)ができ「ドル高是正」が掲げられるのではという憶測も飛び交ったが、為替ストラテジストの花生さんは「それはほぼ不可能に近い」と断言する。


花生さん:
「プラザ合意の1985年当時と比べて今の為替市場の規模は極端に言えば2桁違う。なので介入も含めて政治的な動きで太刀打ちできるはずもない。やはりマクロ的なデータも含めて合理的な政策をとっていかないと、結局政策が失敗してそれが回り回ってドルの信認に波及してしまうというのは、一番やばいシナリオ」


――ドル安で合意したら、弱いドルをみんな信用しなくなり“弱いアメリカ”になってしまい、これまた困ると

花生さん:

「そういう意味で言うと、今回ベッセント氏も含めてアメリカは大人の対応、非常に注意深い対応を取ったと思う」


(BS-TBS『Bizスクエア』 2025年4月26日放送より)


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