中国が“切り札”ともいえる「日本へのレアアース輸出規制」に乗り出す可能性をちらつかせています。輸出規制されると日本企業へはどのような影響がでるのでしょうか?
スマホ、航空機、電気自動車 あらゆるものに使われている"レアアース"
井上貴博キャスター:
レアアースは、どのような製品に使われているのでしょうか。
・スマートフォン
・航空機
・光学レンズ
・電気自動車
・テレビ
・医療機器
・LED照明
・ドローン など
例えば、以下のような場所にレアアースが使われているといいます。
<スマートフォン>
▼バイブレーター:モーターの磁石
▼スピーカー:電気信号を音に変換する磁石
▼ディスプレイ:色を鮮やかにする蛍光体を使用
<航空機>
▼レーダー:強い電波を発するための装置に使用
▼タービン:超高温に耐えるための耐熱材料
中国は“レアアース大国” なぜ?
井上キャスター:
レアアースは17元素の総称です。その17の元素を組み合わせて「ここにはこれが使えるかな」と、用途によって使い分けているということです。
レアアースはその多くが中国で生産されています。2011年当時、中国の生産量は95%でした。この15年ほどで徐々に中国への依存を減らしているものの、現在も7割近くを中国が握っている状況です。
【レアアース生産量】
・中国:69.2%
・米国:11.5%
・ミャンマー:7.9%
・その他:11.3%
またレアアースは鉱石を発掘し、不純物を取り除いて、金属の純度を高める作業が必要です。その精錬量のほとんどを中国が行っているのです。
【精錬量】
・中国:91%
・マレーシア:4%
・ベトナム1%
・その他3%
なぜ、中国がレアアースを独占しているのか。東京大学の中村謙太郎教授によると「鉱石からレアアースを取り出す際、放射性廃棄物が発生」するといいます。
つまり精錬作業をすればするほど放射性廃棄物がどんどん出てくるのですが、一般的な国では環境規制があるため、なかなかこの作業をすることができません。
中国は環境規制が緩く、人件費が安いので安く生産できるという背景があるというのです。
精錬技術はどの国もあるけれど、環境規制の緩い中国が精錬を担っている状況だということです。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
レアアースは非常に厳しい環境で採掘をしています。人権感覚を考えると、中国は優位な立場にあるのかもしれません。
日本は「厳しい環境の中で採掘するにはどうすればいいか」という環境技術のノウハウを持っているので、本当はその分野で協力した方がいいんですよね。
サプライチェーンはリンクしています。中国から輸入したレアアースで日本は部品を作り、それをまた中国に輸出しています。中国が一方的にレアアースを輸出しないようになると、中国はその部品を使えなくなる可能性もあるんです。
中国が本当に輸出規制をすれば日本は苦しくなるけれど、中国にも跳ね返ってくる面もあります。
経済損失6600億円試算も 解決の糸口は?
井上キャスター:
現在、日本も欧米もレアアースのリサイクルを効率的にできないかという話し合いも行っています。日本は中国依存から脱却して先を見つつあるというのは間違いありません。その起点となったのが2010年のレアアース危機です。
当時、尖閣諸島沖で中国の漁船衝突事件が起き、中国は報復としてレアアースの対日輸出を事実上停止としました。その結果、日本企業は対応に追われ大混乱になったのです。そこで日本は中国依存を脱却しようとなったのです。
今回、レアアースが禁輸されたらどうなるのか。野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミストの木内登英さんによると「レアアースの価格が上昇し、電気自動車やスマホの価格も高騰し、物価高が加速するのではないか」といいます。
もし3か月間輸入が止まると日本の経済損失は6600億円という試算も出ています。
中国からレアアースを輸入し、磁石に加工する会社、兵庫・姫路市の「姫路電子」網嶋重昭社長によると、「磁石は自動車やスマホのスピーカー・センサーなどに使用している。在庫は2か月分はあるが、それ以降は未定」「レアアースが手に入らないと企業としては成り立たない」といいます。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
おそらく中国は日本に対してダメージ受けさせようとしているのですが、結果的に中国も返り血を浴びることになるので、あんまり我慢比べをしても生産的ではありませんよね。
どこかの段階で問題解決への端緒が見つかればいいのですが、それが果たしていつなのか、その辺が厳しい。政治的な駆け引きに絡んできますからね。
出水麻衣キャスター:
現状、中国の本気度を日本政府はどのようにみていますか?
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
中国はおそらく日本の反応を見ていると思います。撤回はできないので「台湾政策は従来通りですよ」と高市総理が繰り返し表明し、どこかの段階で歩み寄るというタイミングを計っていると思います。
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<プロフィール>
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身 政治記者歴30年
・「インフルにかかる人・かからない人の違いは?」「医師はどう予防?」インフルエンザの疑問を専門家に聞く【ひるおび】
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