シリーズ「現場から、」。フランスでは、がん患者の生存率上昇を目指し日々研究が進められていますが、患者の社会復帰も課題の1つとなっています。そこで、がん患者にしかできない仕事が注目されています。
パリの総合病院の一室で行われている、ある授業。
記者
「こちらで行われている授業に参加しているのは、全員がんを経験した人たちです」
フランスの名門・ソルボンヌ大学が開設している1年間の特別コースで、その名も「患者の大学」です。この日は、参加者がそれぞれのがん経験を共有することからスタートしました。
肺がん患う女性
「私は子どもの成長を見守らないわけにはいかないと決心しました。一番下が6歳だったので、闘うと決めました」
長期にわたる治療や再発リスクのため、フランスでは、がん患者が職場に復帰しても、2年後には4分の1が退職するといわれています。
一方で、この「患者の大学」では、そうした厳しい治療や不安を乗り越えた経験を社会で活かせるスキルへと変える方法を学んでいくのです。
大腸がん患う女性(60)
「副作用に苦しむ人の手助けをしたいです」
骨髄性のがん患う元教師(52)
「入院している子どもたちに教えることができたら最高です」
15年前に始まってからこれまで1000人近くを社会に送り出していて、その多くがかつての自分と同じような不安を抱えるがん患者たちと向き合っています。
「患者の大学」卒業生 コーエンさん
「調子はどうですか?」
乳がん患者
「ここ数日でだいぶ良くなりましたよ」
2年前に卒業した、カロリーヌ・コーエンさん。再発を防ぐ治療を続けながら、病院で「患者パートナー」として働いています。彼女の仕事は、とにかく患者と接すること。がん経験者だからこそ気づける支援を行っています。
「患者の大学」卒業生 コーエンさん
「周りからは『よく毎日がんの話をしていられるわね。他のことを考えたくないの?』と言われますが、この仕事は私にとっても大きなメリットなのです」
「患者の大学」創設者 トゥルジッス教授
「就職活動で履歴書を作成する際、人は自分の病気を隠します。患者の大学では、こうした困難を克服する力とスキルを身につけることができるのです」
がんの経験を糧に新たな人生を生きていく。2人に1人が、がんを経験する日本でも、こうした取り組みがより大切になるかもしれません。
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