
盲導犬の候補となる子犬を1年間だけ育てる「パピーウォーカー」と呼ばれるボランティアがいます。近年、盲導犬の数が減少傾向にある中、その育成を支える家族にnews23喜入友浩キャスターが密着しました。
盲導犬への第一歩 パピーウォーカーの大切な役割とは
生後2か月の子犬。皆、盲導犬の“候補犬”です。
2025年6月、この子犬たちを育てるボランティア、パピーウォーカーへの委託式が行われました。これからともに暮らす子犬たちとの対面です。
パピーウォーカーは、家族の一員として1年間、子犬を預かります。
盲導犬の訓練が始まるまでに、“人間社会のルール”や“人と暮らす喜び”を教えるのです。
パピーウォーカーの早田栄さん(65)・島村一秋さん(65)夫妻は、メスのラブラドールレトリーバーを預かることになりました。
妻・栄さん
「かわいくないですか」
夫・一秋さん
「お転婆ちゃんなの」
子犬の名前は“クレール”。
妻・栄さん
「クレールはフランス語で光とか明るい。周りの人に光を届けられるような、そんな想いで付けましたね」
盲導犬になってからも呼ばれる名前。それを考えるのがパピーウォーカーの最初の仕事です。
7頭育てた夫婦語る“パピーウォーカーの喜び”
9年前にパピーウォーカーを始めた2人。これまで7頭の候補犬を育ててきました。
夫・一秋さん
「何をしても可愛い時期を一緒に、ほぼつききりでいられる」
妻・栄さん
「それが一番だね」
家庭での生活に慣れることが盲導犬になるための第一歩。
妻・栄さん
「本当に一番は元気に健康で、それこそ修了式に送り出したい。いろんなところに行って、いろんなことにチャレンジしたい」
どんな環境でも落ち着いて行動できる盲導犬になるために、感受性が高いこの時期に様々な場所に出かけることも求められます。
ペットではない、“未来の盲導犬”としての育て方
委託式から3か月が経ち、クレールも大きくなりました。
パピーウォーカーは月に一度、訓練センターの指導を受けることになっています。
この日はワクチンの接種を終えたため、初めてのお散歩レクチャーです。興味津々なクレールは、どんどん前へ進んでいきます。
周りに気を取られず、人に寄り添って歩けるよう、意識づけをしていきます。
盲導犬になるための準備期間。ご飯の時間や量も決められており、細やかな体調管理も必要です。
さらに、排泄を促すトレーニングも。盲導犬になってからは、我慢することがないようにユーザーが定期的に排泄を促します。
ペットとして飼うのとは異なる育て方。家を留守にする時間にも制約があり、負担も責任も大きいパピーウォーカー。
妻・栄さん
「あくまでも契約の中でお預かりしている犬なので。でも、うちの子なんですよ。どんなに疲れてても笑顔になれます。その子が成長して、自分の喜びにも変わっていく」
2人はその可愛さに突き動かされながら、“誰かの役に立てる”、そんな思いでパピーウォーカーを続けてきました。
喜入友浩キャスター
「家族の一員?」
夫・一秋さん
「それはもうそうです。かけがえのない」
妻・栄さん
「クレールが中心の生活」
まもなく巣立ちの日…にじむ寂しさと感謝
毎日欠かさず書いた日誌は337日目。クレールとのお別れが明日に迫っていました。
夫・一秋さん
「フードの量も最初のうちは55g」
「寂しいね」
妻・栄さん
「寂しい」
夫・一秋さん
「やっぱり存在が大きかったよね、クレールはとっても」
妻・栄さん
「ほんと楽しすぎたよね。お散歩とか力強くて大変だったけど、そのやる気がね。クレールには感謝かな」
夫・一秋さん
「楽しかったよ、だね」
妻・栄さん
「元気にね、明るく送り出さなきゃ」
夫・一秋さん
「クレールは喜んでくれるね」
夫婦の想い受け、クレールは次のステップへ
そして、別れの時。
夫・一秋さん
「元気で頑張って欲しいなって。クレールらしければいいんです」
妻・栄さん
「私たちのことも思い出してね」
あれから2週間。パピーウォーカーの元を巣立った犬たちが訓練に励んでいました。
訓練といっても、まずは人との触れ合いを楽しむことが中心です。クレールも元気そうです。
この日は実際にハーネスを付けた歩行も。落ち着いて人のそばを歩き、しっかりと指示も聞いています。
愛情いっぱいに育ったクレール。また会う日にはどんな姿になっているのでしょうか。
なり手不足の問題も…パピーウォーカーの仕事とやりがい
上村彩子キャスター:
もちろんお別れの時は寂しさもあると思いますが、一緒に過ごした1年間の愛情や経験が、盲導犬になる土台になると思うと、誇らしい気持ちにもなると思います。クレールも訓練頑張ってましたね。
喜入友浩キャスター:
楽しそうでしたよね。ちなみに、候補犬のうち最終的に盲導犬になるのは3割~4割ほどと言われています。定期的に様子を見に行きたいと思っています。
上村彩子キャスター:
今回の企画を見て、パピーウォーカーになりたいと思った方もいると思いますが、条件は厳しいそうですね。
喜入友浩キャスター:
例えば、「長い時間家を留守にしてはいけない」であったり、「月に1回のレクチャーを受ける」といった制約があります。
共働き世帯が増えているため、いまパピーウォーカーは深刻な「なり手不足」となっています。そうしたこともあり、盲導犬の実働頭数はここ15年で300頭ほど減り、2025年度は745頭となっています。(日本盲人社会福祉施設協議会より)
視覚障害者のうち、盲導犬のサポートを希望する人は3000人近くいるとされているため、全く足りていないという状況です。
今回取材した島村さん・早田さん夫妻は、「犬の成長にすごくやりがいを感じる。そしてパピーウォーカー同士の横のつながりも、人生の大きな財産になった」ともお話しされていました。
犬に愛情をかけた分、返ってくるものも大きいのがパピーウォーカーです。
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