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「生成AI」の進化で賞やコンテストはどうなる?(1)俳句・川柳編【調査情報デジタル】

国内
2026-06-20 09:00

AIが注目を集めだした当初、AIは人間を単純作業から解放するが、クリエイティブな分野は代替できないという言説があった。ところが日々進化する生成AIは、いまや、文学や音楽、イラスト、マンガ、そして映画と、あらゆるクリエイティブの制作現場で利用され始め、そしてかなりの水準の作品を生み出しつつある。それに伴って大きな影響を受け始めているのが、各種の公募による賞やコンテストだ。これまでは人間の創造力を競い合ってきたが、生成AIが介在して生まれた作品があふれ出したとき、賞やコンテストはどうなるのか?まずは、日本独自の定型詩である俳句と川柳の現状を探った。


生成AIによるものかどうかを見分けるのは困難

第一生命・2025年『サラッと一句!私の川柳コンクール(サラ川)』の審査結果が2026年5月28日に発表された。優秀100句に選ばれた作品の中で目立ったテーマのひとつが、人工知能の「AI」だった。


「チャッピーを どこぞの犬と 勘違い」 まっさん(第11位)


「AIに 相談してから 人に聞く」 アサノ(第12位)


「AIか? 志望動機が 皆同じ」 面接勘(第35位)


サラ川は今から40年前、1986年に「サラリーマン川柳」として始まり、2022年9月の募集から現在の名称に変更している。第1位の作品を投稿した人には賞品としてロボット掃除機が贈られるなど、高額の賞金があるわけではないが、川柳のコンテストの中でも長い歴史があり、高い知名度を誇っている。


2025年のサラ川には同年9月から10月にかけての応募期間に、全国から5万4302句の作品が寄せられた。その中から優秀100句を選んだ上で、3万9652人の投票によってベスト10が決定した。


第1位は、すっかり普及したキャッシュレス決済を題材にした「キャッシュレス 充電無くなり 無一文」(ぱなっぷ)。第3位は、大阪・関西万博と物価高を題材にした「ミャクミャクと 続く気配の物価高」(おとちゃん)と、世相を反映した作品が並んだ。


また、AIをテーマにした作品も、上記のようにベスト10には入らなかったものの、100句のうちの10句以上を占めていた。ちなみに、2024年のサラ川で第1位に輝いたのは、「AIの 使い方聞く AIに」(七夕するめ)だった。


多くの人々の生活や仕事の場面にAIが入り込んで来ている証左と言えるが、果たして、そのAIを利用してサラ川に応募することは問題ないのだろうか。


2025年のサラ川の募集要項には、応募作品の生成AI利用については、何も記載されていなかった。その理由を第一生命の担当者に聞くと、「想定していなかった」との回答だった。


「2025年9月の前回募集までは、応募作品に生成AIを利用されることは特に想定しておりませんでした。現状では生成AIへの対応について決まっているものはなく、次回の募集(2026年9月開始予定)における対応については引き続き検討しております」


また、作品が生成AIによるものかどうかを見分ける方法を検討しているのかについても尋ねたところ、その難しさを滲ませる回答が返ってきた。


「川柳は5・7・5の限られた字数で詠まれるものであるため、チェックツール等が開発されない限り、生成AIによるものか見分けることは非常に困難と認識しております。現時点では、見分けるための具体的な方策は有しておりません」


「生成AI禁止」を盛り込むことで応募者の良心に訴える

ChatGPTが2022年11月に一般公開されて以降、生成AIは急速に進化を遂げている。対話型のAIサービスによる文章やスライドの作成、プログラミングの支援、画像、動画、音楽の生成など幅広い用途で活用されている。それまで人間が行なってきた、創作活動を代替する能力を持つようにもなってきた。このため様々なコンテストが、応募要項などに生成AIの利用を認めるか否かを記載するようになっている。


川柳のコンテストは、観光振興やまちおこしなどを目的に全国各地で開催されている。ただ、生成AIは瞬時に何百本もの川柳を容易に作ることができるため、多くのコンテストが対応に苦慮している。


そんな中で、生成AIの利用を禁止したのは、琉球泡盛倶楽部が主催し、沖縄県酒造組合が共催している「泡盛川柳」。泡盛にまつわるエピソードや思い出、感動などを詠んだ川柳を募集するもので、これまでに6回開催されている。


2025年度の募集では、生成AIの対応について「人工知能(生成AIなど)の使用は禁止です。受賞作がAIで作成したと判明した場合は、受賞を取り消します」と明確に禁止を盛り込んだ。その理由を、琉球泡盛倶楽部の長嶺哲成会長は次のように説明する。


「AIかどうかを判別するのは難しいかもしれませんが、とりあえず応募者の方々の良心に訴えることが大事だと考えました」


「泡盛川柳」では、入賞作品を決める前に、審査員が選んだ上位30から50ほどの作品について類似作品がないかどうかを、AIを使って調べているという。その結果、別のコンクールの入賞作がほぼコピーされていたケースを過去3回見つけたことがある。それでも長嶺会長は、コンテストを続けていきたいと考えている。


「印象的な一節があった句をAIに調べさせると、あるコンクールの前年度の入賞作の一部がコピーされていることがありました。個性的な作品は逆に疑うようにしています。泡盛の場合、言葉は認知されていても、愛飲者は全国に少ないので、AIによる作品が上位作品に紛れ込む可能性よりも、むしろ川柳のコンクールを開催して、少しでも知名度を上げて行った方が泡盛の業界全体にとってはプラスになるのではないかと考えています」


生成AIの影響で終了したコンテストも

一方、長年続いていたものの、最近終了したコンテストがある。それは、鳥取県境港市の境港観光協会が主催していた「妖怪川柳コンテスト」だ。


「ゲゲゲの鬼太郎」などで知られる漫画家の水木しげるさんの出身地を盛り上げようと、妖怪をお題にした川柳を全国から募集するコンテストとして、2006年から開催されていた。それが、2026年2月に受賞作品が発表された第20回をもって幕を下ろした。


その理由の一つが生成AIだったと境港観光協会の担当者が明かす。


「生成AIの利用は想定していなかったので、募集要項には特に記載していませんでした。けれども、去年事務局でAIを使って作ってみると、パッと作れますし、どんどん情報を与えるとどんどん上手くなっていくんですよね。ただ、AIが作ったから人の創作じゃないと言えるのかといえば、その線引きも難しいのも事実です。


それに、もしも私たちが賞に選んだ作品が、『実はAIで作りました』みたいな話になるのも、毎年送っていただいているファンの方にも申し訳ないと思いました。現場に来てもらって、その場で詠んでもらうことも検討しましたが、参加のハードルも高くなってしまいます。20年続いたので、一通り役目も終わったんじゃないかと思い、このタイミングで終了しました」


「お〜いお茶新俳句大賞」は類似作品防ぐ検証作業を実施

川柳同様少ない文字数で作品を構成するのが俳句だ。


俳句の賞・コンテストの中で応募作品数日本一を誇るのが「伊藤園お〜いお茶新俳句大賞」。最優秀賞の文部科学大臣賞をはじめ、入賞1000作品が「お〜いお茶」の商品パッケージに掲載されることが、多数の作品を集めている理由だ。賞の審査員にはテレビ番組などでおなじみの俳人・夏井いつきさんも名を連ねている。


第37回は現在審査が行われており(10月下旬に受賞作品の発表予定)、作品募集自体は2月末に終了しているが、その募集要項には注意事項として「応募作品は本人が創作した未発表のものに限ります。必ずご本人がご記入・ご入力ください」と書かれている。


生成AIを利用した作品への対応について事務局に尋ねると、次のように答えた。


「現時点におきましては、応募規定に記載の通り『本人が創作した未発表の作品』に限定しております。本規定における『本人創作』とは、生成AIに限らず第三者的な手段による創作を含まないものと定義しており、生成AI等を用いて制作された作品は応募規定の対象外としております。受賞後において当該事実が判明した場合には、応募規定に基づき対象外として対応いたします」


ただ、「伊藤園お〜いお茶新俳句大賞」は、募集に対して毎回180万から190万もの句が寄せられる。仮に生成AIが使われていた場合、見分けることができるのだろうか。


事務局では「既存作品との類似を防ぐことが課題」として、「生成AIの利用の有無に限らず、二重投稿や既出作品との類似や重複が認められる場合、応募規定に基づき対象外」になると説明。類似を防ぐために検証を行なっていることを明かした。


その検証とは「約76万句の俳句データベースとの照合」と、「インターネット上での類似検索」、それに「他の俳句大会・団体との連携」。かなりの労力を費やしていることがわかる。


ただ、それでも「現時点においては生成AIによる作品か否かを技術的に完全に判別することは難しい状況」にあるという。


そして今後(第38回以降)の生成AI俳句の取り扱いについて事務局は、「審査員をはじめ、俳句団体等のご意見も頂戴しつつ検討していきたいと考えております」と話す。


禁止?共存? 揺れる主催者

限られた文字数で表現する日本独自の文化である俳句や川柳。日々進化するAIは人間に匹敵する作品を続々と生み出しつつあり、賞やコンテストの主催者たちは、AIを禁止するのか、それとも共存の道を探るのか、その対応に頭を悩ませているのが現状のようだ。


ただ、こうしたAIをめぐる人間の“悲哀”は、ますます川柳の恰好のネタになってゆくだろう。


サラ川を主催する第一生命は、「次回の募集においても、AIが日々の生活に浸透していく様子を捉えた句が多く寄せられることを期待しております」と、さらに面白い句が生まれることを期待している。


「調査情報デジタル」編集部(田中圭太郎)


【調査情報デジタル】
1958年創刊のTBSの情報誌「調査情報」を引き継いだデジタル版のWebマガジン(TBSメディア総研発行)。テレビ、メディア等に関する多彩な論考と情報を掲載。原則、毎週土曜日午前中に2本程度の記事を公開・配信している。


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