自民党が参議院選挙に敗北して、初めて行われた国会論戦。衆参ともに少数与党となったことで、「給付と減税」どちらも実現する可能性が出てきました。
落選者ヒアリング「トップ退くのが普通」
静けさの中始まったのは、先の参議院選挙で自民党から出馬し、落選した候補者を集めたヒアリングです。
午前と午後2回に分けて行われ、SNS活用の課題など参院選の敗因について意見が交わされました。
落選した自民党の前参議院議員 三宅伸吾氏
Q. どういった意見を言われたか?
「他の人に聞いて」
落選した岸博幸氏
「トップの方が1回退くっていうのが普通かなと思っている。そういう対応になることを期待している」
依然として自民党内で石破総理の責任を問う声が上がる中、国会でも、石破総理は野党の追及に防戦一方でした。
「給付」と「減税」両方実現も?
国民民主党・玉木雄一郎代表
「そもそも総理いつまで続投されるんですか」
「続投するならどういう理由をもってするのか」
石破総理
「『日米合意』というものは、私どもの政権においてずっとアメリカと交渉を続けてきたもの」
「『国難』という言い方をあえてするならば、その突破というものが1日も早くあるべく、私どもとして努力をしていきたい。それがいつなのかということは断定はできません」
続投の意思について問われた石破総理は、日米合意の実行を理由に改めて続投に意欲を示しました。
立憲民主党の野田代表は、アメリカと合意文書が交わされていないことを問題視しました。
立憲民主党・野田佳彦代表
「トランプ政権ですよ、(合意)文書も作らなかったら、どんどん拡大解釈をして日本はぼられ続けるんじゃないですか」
石破総理
「相手が普通の人ではない。ルールを変えるという人なので」
「合意をするよりも、実行に移す方がより難しい」
「(合意)文書を作ることによって、関税の引き下げが遅れることを私どもは一番恐れております」
参院選の大敗を受け、石破総理が野党の要求に歩み寄る場面も。
その一つが、「物価高対策」の進め方です。
立憲民主党・野田佳彦代表
「民意で示されたことは、私はやっぱり減税だったと思う」
「民意で否定されたこと、給付金をあのまま実現しようと、これからも自民党続けるんですか」
石破総理
「私どもは選挙の時に公約をいたしましたことが、残念ながら十分にご理解いただけたと思っておりません」
「私どもは比較第1党頂戴いたしました。御党(立憲民主党)が第2党でございます。第1党、第2党だけでものを決めるわけではないが、それだけのご支持をいただいている責任というものは、私どもは共有して参りたいと思っています」
野党第一党の立憲・野田代表に対し、「責任」を「共有したい」と述べ、今後の現金給付、そして減税の可能性について協議を進める考えを示しました。
立憲民主党・野田佳彦代表
「給付金、そして次につなげる減税の可能性、そしてその先の『給付付き税額控除』について、真摯に協議をさせていただければ」
石破総理
「その通りにしたいと思います」
少数与党「対決」から「協議」に?
藤森祥平キャスター:
参議院でも少数与党になりましたから、「対決姿勢」よりも「協議の構え」ですよね。
斎藤幸平さん:
何をなあなあでやってんだよという感じがしてしまいます。だって今、与党は衆・参で過半数を割っていて、立憲民主党とかにしたら政権交代の最大のチャンスなんだから、もっと不信任案出したりだとか、攻めなきゃいけないときにやっていなければ、二大政党制のどっちも駄目だっていうふうになって、その不満が全然違うポピュリズムなんかに流れてしまうのではないかと、そういう危惧があります。
藤森キャスター:
野田代表は対決姿勢は秋になっても良いと。
斎藤幸平さん:
今選挙をやりたくないということの言い訳を、「石破やめるな」みたいなことに使っているとしたら、それは本末転倒じゃないですかね。
日本でも“リベラル離れ”?
藤森キャスター:
JNNが週末に行った世論調査を見ていきますと、各党の支持率の順番が上から自民、参政、国民、立憲は4番手というかたちですよね。
小川彩佳キャスター:
攻めの姿勢が足りないという、斎藤さんが今おっしゃっているようなことがあるのかもしれないですけれども、日本でリベラル離れが起きているのか、その辺りは斎藤さんどうですか。
斎藤幸平さん:
これ世界的な流れでもあるんですけれども、トマ・ピケティというフランスの経済学者が言っていますけど、今リベラル政党というのが、環境問題であるとかLGBTQの問題みたいな、もちろん重要な問題だけど、どちらかというと都会のエリートの人たちが関心を持つような問題ばかりを扱うようになっていて、いわゆるマイノリティではないけれど今の生活、社会がちょっとしんどいなというふうに感じているような労働者階級のことを見捨てるようになってるんじゃないか、という批判を彼はしているんですね。
そういう意味でいうと、今すごい伸びてる参政党なんかは、保守的なモチーフを使ってリベラルを批判しながら、国民の不満をすくい出して、例えば「反グローバリゼーション」とか、「反緊縮」「反小さな政府」みたいな形で、人々の不満をうまく自分たちの支持に繋げてるなという印象はありますね。
小川キャスター:
その「反グローバリゼーション」「反緊縮財政」「反小さな政府」というところで言うと、斎藤さんがいらっしゃったドイツでは極右政党が一気に伸びたんですよね。
斎藤幸平さん:
これは「反移民」ですよね。参政党なんかとも似ていると思うんですけど、ドイツで今起きてることは、1回こういう政党=極右が伸びてくると、いわゆる普通の政党=キリスト教同盟など政権を持ってる政党なんかも、自分たちもあいつらの言ってることを真似しなきゃとなって、批判しながらも実はどんどんそこに寄って行ってしまう、政治の軸がやっぱり全体として右へ右へとなっていってしまうのが、私なんかは外国人として暮らしていて凄く不安でした。
小川キャスター:
それが今後、日本で起きていく可能性というのはどうですか。
斎藤幸平さん:
これはドイツだけじゃなくフランスとかアメリカを見ていても、ポピュリズムで極右の政党が伸びるときは、実は同時に左のポピュリズムも伸びているということです。いわゆる極左も伸びている。
特にドイツでは左翼党という政党が今回2月の選挙で伸びたんです。だから右も左も伸びる。つまり真ん中が信用できないからポピュリズムに行く。ただ日本の場合は、左のポピュリズムっていないんですよね。
例えば共産党とか社民党なんかも、どちらかというと高齢化が進んで支持率もどんどん下がっているという状況。そこで私が心配なのは、こういう状況になると、例えば「反移民」みたいなポピュリズムがどんどん伸びてくると、それを止めるような、歯止めとしての左の政党がいない中で、右のポピュリズムばかりが伸びてしまうことで、一気に行ってしまう。
そういう中で私たちが本来もっと考えなければいけない少子化の問題、気候変動の問題、あるいはアベノミクスの負の遺産をどうするかとか、そういう問題はどんどんどんどん後退していってしまう、時間が失われていく、日本経済がもっと沈没していく、そういうことを危惧しています。
藤森キャスター:
いま既存政党が自分たちの党のあり方の見直しをやっている中で、その見直しの仕方というのが、どういう方向に進むかというのも注目しなければいけませんよね。
斎藤幸平さん:
そういうのが無いまま、自民党も党内で権力闘争をやっているというような状況になってしまうというのが残念です。
小川キャスター:
ただ、これはいま突然起きたことではなくて、これまで受け皿が見つからず、鬱積し続けてきた不満や不安というのが一気に噴出した結果だというふうにも感じますから、これを与野党含めてどう向き合っていくかですよね。
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〈プロフィール〉
斎藤幸平さん
東京大学准教授 専門は経済・社会思想
ドイツ在住 著書『人新世の「資本論」』
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