30日、日本の広い範囲に到達した津波の影響で全国各地は“混乱の1日”となりました。警報・注意報解除までに、なぜここまで時間がかかったのか。元気象庁職員に聞きました。
【写真でみる】防災アドバイザーに聞いた“酷暑の避難”で気を付けること
熱中症の搬送者も…夏の避難は「災害」と「暑さ」から身を守る
井上貴博キャスター:
今回は、酷暑の中での避難となりました。
兵庫で観測史上最高41.2℃、そして、太平洋側でも軒並み30℃を超えました。熱中症の疑いで運ばれる人も出ています。
【7月30日の最高気温と酷暑避難で起きた搬送状況】
岩手・久慈:30.4℃
避難していた90代男性が熱中症の疑いで搬送
仙台:32.0℃
避難していた50代女性が熱中症の疑いで搬送
東京:34.8℃
兵庫・柏原:41.2℃ 観測史上最高
酷暑での避難では、どういうことに気をつけていくべきなのでしょうか。
防災アドバイザーの野村功次郎さんによると、「夏の避難は、災害と暑さの両方から身を守る必要がある」とのことです。
▼水分・塩分を補給する:体力・判断力を低下させない
▼日陰で過ごす:日傘を持って避難。レジャーシートを屋根代わりに
▼体を冷やす:水や氷で首元・手のひらを冷やすことも大切
「より高い場所に避難を」だけではなく、「屋内施設に身を置いてください」ということも、大切だと感じました。
水の確保は、水道水でも十分と言われています。直射日光を避けることができれば、常温で3日間保ちます。できれば、塩素を除去しないよう「浄水器を通さず」蛇口から直接くんでください。
避難の選択肢に、徒歩だけでなく“車”も入れていただきたいと思います。
小中学校の体育館での空調設備の設置率は、全国平均で22.7%となっています。
車で避難できれば、エアコンが使え、スマホなどの充電もできるので、常にガソリンを満タンにするよう心がけてください。
空調設備の設置率は
▼東京都 92.5%
▼大阪府 49.2%
▼神奈川県 14.6%
東京が突出して9割設置されていますが、各自治体が10~20%ぐらいです。設置率を上げていかないといけないですよね。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
石破総理の政策の目玉は防災庁でした。中央の組織を作るだけではなく、防災面の整備をしていくのが防災の肝だと思います。
元気象庁職員 石川有三さん:
やはりエアコンを設置しないと、避難しても、そこで犠牲者が出てしまいますからね。
なかなか解除されない津波注意報 背景にある“反射波”の可能性
井上キャスター:
30日午前8時37分に「津波注意報」が発表されて、海外機関からの情報でM8.7になったことで、午前9時40分に、「津波警報」に切り替わりました。
そこから午後8時45分に「津波警報」が全て解除。そして発生から約32時間経った、31日午後4時半にようやく「津波注意報」が全て解除されました。
なぜ津波注意報・警報が異例の長さになったのか。今回特有の難しさが指摘されています。
カムチャツカ半島と日本列島の東側に、「天皇海山列(かいざんれつ)」という、火山活動で形成された海底山脈があります。南北に約2000㎞あるそうです。
この海底地形「天皇海山列」があることで、津波が反射・合流し、津波が繰り返し向かってくる。気象庁として、計算して算出するのが大変難しいということです。
過去には、天皇海山列から跳ね返る津波を把握しきれなかったケースもありました。
2007年1月13日午後1時23分ごろ、千島列島東方でM8.2の地震が発生しました。この時、津波注意報が全て解除されたのが午後10時10分。
津波注意報を解除した後に、各地で最大波が観測されたといいます。
▼13日午後10時20分
岩手・大船渡で27㎝
▼13日 午後10時53分
静岡・舞阪で6㎝
▼14日 午前0時0分
青森・下北で14㎝
▼14日 午前1時47分
三重・尾鷲で11㎝
▼14日 午前3時22分
和歌山・浦神で13㎝
▼14日 午前5時46分
北海道・釧路で13㎝
元気象庁職員 石川有三さん:
津波警報はなるべく早く解除してほしいと、いろんなところから来るわけです。その当時は反射波をそれほど重視していませんでした。
なので、ある程度大きい波が終わったら解除していました。そうすると、その後から結構大きい反射波が来てしまったということですね。
それ以降は、反射波の影響を考慮するようになりました。特に今回のカムチャツカ地震は、反射波を考慮して、津波注意報の解除が遅くなってしまったということです。
井上キャスター:
データも少ない中で、反射波をどのように算出するかは、難しいと思います。また、解除までが長引くほど経済的な損失もある。命をどう守るのかのバランスはどう思いますか。
TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん:
総理官邸・危機管理担当の人と少し話してみたのですが、「津波警報が出たけど家に帰れない」ケースが続出したわけです。
それを考えると、今回も津波警報・注意報を出す地域と時間については、少し再検討する余地があるのではないか。「もう少し時間を短くする、地域を限定するなどの検討が必要かもしれない」と担当者が言っていました。
出水麻衣キャスター:
気象庁としては、地域別などは可能なのでしょうか。
元気象庁職員 石川有三さん:
おそらく今回、要望がいろんなところから来ると思うので、それを検討することになるかと思います。例えば、地域によってレベルを分けて、警報の内容を変えていこうといった話になると思います。
井上キャスター:
今は県レベルで出していますが、現実的にはどのくらい細分化が可能なのでしょうか。
元気象庁職員 石川有三さん:
市区町村はなかなか難しいと思います。県でも、行政的な区分と地形的な区分が必ずしも合っているわけではないんです。津波が大きくなるようなところだけを選ぶとしても、行政的にうまく合わないということがあります。分けるにしても、難しい問題があると思います。
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〈プロフィール〉
星浩さん
TBSスペシャルコメンテーター
1955年生まれ 福島県出身
政治記者歴30年
石川有三さん
静岡大学客員教授
元気象庁職員
津波のメカニズムに詳しい
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