30日朝、ロシア・カムチャツカ半島付近で発生した地震の影響で、11時間にわたって津波警報が出されました。一時、21都道県のあわせておよそ200万人に避難指示が発表されました。猛暑の夏に重なった津波警報。夏休みの旅行先で避難に困った人や、避難中に熱中症の疑いで体調を崩す人が出るなど、課題も見えてきました。
11時間の「津波警報」避難で混乱も
ロシアメディアがカムチャツカ半島南部の島に津波が到達したと報じた映像。白い建物が流されている様子や、付近の建物が水につかっている様子が確認できます。
気象庁によりますと、午前8時25分ごろ、ロシアのカムチャツカ半島の近くを震源とする地震が発生しました。
幼稚園では、建物の一部が崩れてしまっています。揺れは7分以上続いたと伝えられています。
アメリカの地質調査所によりますと、地震の規模を示すマグニチュードは8.8と推定されています。
この規模の地震は、1900年以降に発生した中で6番目に大きい規模に位置づけられます。
この地震の影響で、太平洋沿岸の広い範囲に津波警報が出されました。
記者
「波が河川に押し寄せているような状況が確認できます」
千葉県の九十九里浜では、津波が川を遡上しているような現象がみられました。
宮城県多賀城市でも、白波を立てて津波が遡上していく様子が確認されています。
避難指示は一時、200万人以上が対象となりました。
記者
「午前9時の釧路です。津波注意報を受けて停泊していた船が港から出ていきます」
北海道の釧路港では、津波警報が発表されると、港にとまっていた多くの漁船やタンカーが沖に向かって避難。
記者
「高台にみなさん車で避難されているんですが、かなりの台数が止まっています。乱雑に置かれていて、混乱がみえます」
避難する車で道路がふさがれている状況も。また、渋滞により、なかなか前に進まない場所もありました。
記者
「根室市花咲港です。岸壁そばにある防潮堤が閉まりました」
北海道・むかわ町の消防署の屋上には、避難してきた多くの住民の姿が。
一部の地域では午前9時40分に津波注意報から津波警報に切り替わり、茨城県では消防車がサイレンを鳴らし警戒。高台には多くの人が避難していました。
避難した人
「ガストでご飯を食べていたところ、店長から緊急の放送があって、『お代もいらないので、全員避難してください』と言われ。高台はここなので一目散に出てきた」
午後1時52分には、岩手県・久慈港で1メートル30センチの津波を観測。このほか、北海道・根室市などで80センチ、宮城県の仙台港や石巻港などで70センチ、茨城県・大洗港などで60センチの津波が到達しました。
横浜でも30センチの津波を観測。住宅街では海から離れるよう呼びかけがおこなわれていました。
防災無線
「海から離れてください」
愛知県田原市の展望台にある駐車場は避難してきた車で埋まり、道路脇にも車の列ができていました。
避難者
「津波警報が来て逃げようと思ってて、山の上が一番安全かなと思って来ました。心配ではありますけど、子どもたちも夏休み中ですし。一応、解除するまでここにいようかなと」
一方、カムチャツカ半島近くの震源から4000キロ以上も離れた沖縄県でも津波注意報が出されました。
学童指導員
「いま波がたぶんこのくらい。それが大きいのか、小さいのかも分からないからここに避難している、安全な場所に」
防災無線(三重・尾鷲市)
「津波警報、今すぐ避難してください」
大きな揺れがない中での、突然の津波警報。三重県尾鷲市では、高台へ急いで向かう人たちの姿が。
避難する人
「(Q.どちらに避難する?)中村山」
住民が避難に追われる中、悲惨な事故も起きました。
波打ち際の海岸で、逆さまの状態で大破した車。三重県熊野市では、避難しようとした車が崖から転落し、運転していた58歳の女性が死亡しました。
女性は津波警報を受けて、家族に「高台に車を置いてくる。退避場所がある」などとメッセージを送っていて、1人で避難場所に向かう途中だったとみられます。
また、北海道や宮崎県で避難中に転倒してけがをする人や、避難所で熱中症疑いで体調不良になった人などがいたということです。
スーパー・コンビニも臨時休業
午後7時すぎ、気象庁が会見を行いました。
気象庁地震火山部 清本真司 地震津波対策企画官
「現在の津波の観測状況等も踏まえますと、少なくとも1日程度、津波の高い状態が継続する見込みだというふうに考えている」
その後、気象庁は午後8時45分、北海道から福島県の太平洋側に発表していた津波警報を、すべて津波注意報に切り替えました。
一方、茨城県日立市。避難所で1日を過ごした人は…。
避難者
「また来たかっていうようなね、何回もそういう経験してるんですよね。震災・東北のね、あれもあったから。(Q.ずっとこの体育館にいるというのは)安心だよね、うちはすぐ目の前が海ですから」
高柳光希アナウンサー
「先ほどまで、15人ほどがこの場所に避難していましたが、津波警報から注意報に引き下げられたことを受け、皆さん帰宅されました」
各地では、飲食店などの臨時休業も相次いでいます。
記者
「海岸にほど近いショッピングセンターですが、臨時休業しているということです」
大手スーパーの「イオン」や「イオンモール」では、太平洋沿岸の一部店舗で臨時で営業を取りやめました。
また、コンビニ各社も一時休業している店舗があるということです。
フェリー4隻 “海上で足止め”
夏休みシーズン真っ只中に発表された「津波警報」。各地の観光地に大きな混乱をもたらしました。
記者
「深沼海水浴場、遊泳期間中ではありますが、津波警報が発表されているため、人の姿はこちらからは確認できません」
海水浴場は各地で閉鎖。高台には避難する車が押し寄せていました。
記者
「午前11時すぎ、いわき市小名浜の沿岸部の幹線道路です。沿岸部から内陸部に向かう車の列で渋滞しています」
フェリーの運航にも影響が出ています。「商船三井さんふらわあ」の運航するフェリー4隻が、津波警報が発表されたため、港に入れず、海の上で足止めとなりました。4隻には合わせて900人の乗客・乗員が乗っているということです。その乗客が取材に応じました。
乗客(30代)
「(Q.自身の位置はわかるのか?)テレビのモニターで、この辺にいますよって出ている。自分たちから苫小牧港が見えているので。ずっと同じところにいるという形」
乗客は、茨城県・大洗港を29日夜に出発し、北海道・苫小牧港に30日午後1時半に到着する予定でした。十勝で行われる自動車レースに出場する予定だったといいます。
夏休みということもあり、船内は満室。子ども連れの家族も多いといいます。
乗客(30代)
「乗務員がすごく丁寧に対応してくれるので。子どもたちがそろそろ飽きてしまったようで、お父さん、お母さんたちが大変そう」
夕食では、乗客にカレーが振舞われ、食事や設備面など問題はないということです。
乗客(30代)
「レースで来ているので、正直早く着きたい気持ちはあるが。こういう状態なので安全に、特に何事もなく苫小牧の港に着ければいいと思っている」
旅先で…帰宅困難者 相次ぐ
夏休みの旅行先で交通手段を失う人も多くいました。
渡辺峻アナウンサー
「鎌倉駅前には、タクシーに乗ろうと、たくさんの方が並んでいます」
鉄道がストップした鎌倉駅。タクシー乗り場には、長蛇の列ができていました。炎天下、時刻表の前で汗をぬぐう女性や、券売機の前でぐったりする人たちの姿も。
鉄道だけではありません。
渡部峻アナウンサー
「津波警報の影響ということで、鎌倉駅前のお店はシャッターを閉めています」
旅行先での津波警報、避難した観光客も多くいます。
鎌倉市では議場を開放、避難所にしていました。
避難者
「夏休みで家族で横須賀に泊まりに行こうと思った。電車乗っているときに津波警報がきて」
「鎌倉で行き止まりになっちゃった感じ。(警報の)アナウンスの音が大きくて、ちょっと怖かった」
海外からの観光客も多い鎌倉、外国人も多くいました。情報を得ようとしているのでしょうか、多くの人がスマホを操作しています。こうした観光客のため…
英語でアナウンス
「皆様にお知らせです。午後1時現在の列車運行状況について最新情報をお伝えします」
複数の言語で情報を提供していました。
近くの市役所でも…
渡部峻アナウンサー
「避難所となっている鎌倉市役所の中です。列をなしていて、最後尾が見えなくなるほど長い列となっています」
窓口も外国人の姿が多くあります。この長い行列の理由は…
渡部峻アナウンサー
「ちょうど臨時バスが出るところです。市役所の入り口から、帰宅困難な方が臨時バスに乗っていきます」
市が用意した臨時バスです。運行しているモノレールの駅まで帰宅困難者を運んでいたのです。
移動に困る人は他にも。午後6時ごろ、京浜急行・堀ノ内駅前にはタクシー待ちの列ができていました。
タクシーの列に並ぶ人
「警報が出て、すぐ帰ってくださいということで、お昼くらいに(職場を)出たんですけど、まだ家に帰れません。2時間くらいになっちゃう」
「横浜に着いた時に警報になってるって。大変ですね、もう疲れちゃって」
岐阜から来た家族連れ。子どもは疲れ切っています。都心方面からの電車は、ここでストップ。堀ノ内駅より先に向かう人が並んでいるのです。
タクシーに乗り込む人
「2時間半待ちました、約3時間。同じ方向だから、みんなで」
交通機関にも大きな影響を与えた津波警報。気象庁は、注意報が解除されるまで安全な場所から離れないよう呼び掛けています。
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