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津波は「波」でなく水の「壁」 専門家が提言する地震の“距離”に応じた最適な避難行動【Nスタ解説】

国内
2025-07-30 22:54

30日、ロシアのカムチャツカ半島の近くを震源とする巨大地震が発生し、各地で津波が観測されました。その特徴について、日本地震予知学会の長尾年恭会長に解説してもらいます。(30日放送 午後6時40分頃放送)


【写真を見る】津波の影響か? 普段より早い潮の満ち引きの様子


津波は「波」ではなく「水の壁」 

井上貴博キャスター: 
1m30cmの津波が観測された岩手県の久慈港で撮影された映像を見ていきます。


日本地震予知学会 長尾年恭 会長:
実は、潮の満ち引きというのは1日に2回だけですが、これは非常に短時間で満ち引きしていて、映像を80倍速にしても数分~10分くらいで満ち引きしてますよね。

海面全体が非常に速く上下しているというのが非常に大きな特徴です。

潮の満ち引きであれば、1日に2回しか起きないものが、この短時間で何度も堤防まで上がってきて下りてきている。なので、津波というのは波ではなく、実は“水の壁”が押し寄せていると考えた方がいいです。


井上キャスター:
船の揺れ方とかで何か言えることはありますか?


長尾年恭 会長:
これもはっきりとはわかりませんが、普通の潮の満ち引きであればそこまで早く船が揺れないので、津波で、海岸から海水が港の中に入ることによって比較的早く揺れているのかもしれません。


井上キャスター:
映像で船の揺れ方を見てみます。


長尾年恭 会長:
これもかなり早いような気がします。なので、もしかすると津波のとき、あるいは今後こういう現象を検証して、津波のときの特徴というものが出てくるかもしれません。

ただし一つ言えるのは、このスケールでは非常に早く上下運動をしている、これが津波の特徴です。


井上キャスター:
80倍速に編集するとわかりやすくて、素人の私たちも「早いな」と感じられますが、例えば、今日ずっと海の様子を見ていて、パッと見るとそんなに変動がないように感じて、「あれ?大丈夫なんじゃないか」というミスリードになることが怖いです。


長尾年恭 会長:
サーフィンのような波ではなく、“水の塊”がやってくると思ったほうがいいです。水が塊で動くため、数十cmでも人間は全く立っていられません。

なので、もし1mの津波でも死亡率が100%に非常に近いということが考えられるわけです。


井上キャスター:
画面ではなかなか伝わりづらいのが津波の特性なのかもしれません。


気象庁のHPに載っていた、岩手県久慈港の潮位の変化の様子です。満潮は1日に2回やってきますが、その中で、7月30日の12時前にはすでに波形が震えています。これが第一波のように見えます。

その後、複数波でどんどん潮位は高くなっていき、赤いラインの高潮警報の基準を超えました。


長尾年恭 会長:
これはちょうど満潮に近いとき、いわゆる元々の海水面が潮汐で高くなっていくときに起きたということ。なのでこの状況と低気圧の接近、あるいは台風の接近が重なると、さらに大きな被害が出るわけです。


出水麻衣キャスター:
一見、右肩上がりに見えます。

長尾年恭 会長:
潮の満ち引きに津波が重なっているというふうに考えてください。


井上キャスター:
満潮時刻は18時すぎで、今まさにというタイミングです。そうするとやはり、上の振れ幅がより高くなりますか?


長尾年恭 会長:
逆に、1mなくても満潮の時は高潮の危険水位を超えてしまうということですね。


井上キャスター:
今回の津波の特徴というのは、時間が経てば経つほどより高くなってくると話されていましたが、18時45分現在の実数値と自身の感覚に何か開きはありますか?


長尾年恭 会長:
1952年がM9.0で今回がM8.8ということで、もし終われば、エネルギーとしては4分の3ぐらいであるということ。そうすると、もしかするとかなり解消が近い可能性があります。

先ほど気象庁も、一部地域を津波警報から津波注意報に繰り下げました。これは非常に良い兆候だと思います。最新のデータを見て、「これは多分大丈夫だ」ということで、関東地方の津波警報を注意報に切り替えたのだと思います。


井上キャスター:
切り替えは、長尾会長の予想よりも早かったですか?

長尾年恭 会長:
私が予想していたよりもかなり早かったです。


なぜ特定の場所で津波が高くなる? 海底地形の影響とは

井上キャスター: 
ロシアのカムチャツカ半島から日本列島まで距離が離れているからこそ、第一波が低く出がちだが、どんどん後から高い津波が襲ってくる可能性がある。これが今回の難しさだと、指摘されてきました。

例えば1952年の地震のときも、今回と同じ久慈港で高く出ました。


長尾年恭 会長:
実は1952年の地震も、(震源地が)ほとんど同じ場所でした。実際の震源は点ではなく、長方形のような形で南西方向に伸びています。そうすると、(長い辺の側にある)ハワイやミッドウェーの方向に大きな津波が行く。そして長方形の短い辺の側は、日本列島を向いています。短いといっても100kmくらいはあります。


実は津波が高くなる場所というのは決まっています。例えば港の近くの例えば5km、10kmという海底地形がレンズのような効果を示します。

有名なのは伊豆半島の下田で、地震が東北で起きても、南海トラフで起きても、常に一番高くなるような場所です。


井上キャスター:
そう考えると、津波が発生した場所ももちろん重要ですが、日本側の海底地形が問題になるのですね。


長尾年恭 会長:
そうです。自分の港の沖合に、津波を高くするレンズのような役目をする構造があるか、ないかということが重要です。

水深の浅い部分が沖合にあると、津波の速度が遅くなります。遅くなると屈折して1か所に集まってきます。下田だけでなく、久慈港の沖合にも恐らくそういう海底地形があるのだと思います。


そのため、例えば八丈島などの離れているところでも大きな津波が来ることがあります。要するに島という海の真ん中に突き出したものがあると、そこの周りでは波が集まってきます。


井上キャスター:
そういった意味で、少し(津波が)高くなりがちな場所はどこがありますか。

長尾年恭 会長:
例えば有名な場所は岩手県のリアス海岸。谷が内陸の深くまで入っているところでは、(波が)両側に反射して、どんどん遡上高が高くなります。


井上キャスター:
今回「津波注意報」が発表されたのが午前8時37分、そして津波の第一波の予想時刻が午前10時でした。津波注意報が発表された場合は、すぐ避難というよりも「海岸から離れてください」ということをメディアがいいます。

今後は、津波注意報なのか、津波警報なのか、また遠方地震なのかなどによって、メディアもより細かく情報を発信してもいいのかなと思いますがいかがですか。


長尾年恭 会長:
南海トラフだと数分で津波がくるので、着の身着のまま逃げる必要があります。一方で例えば東日本大震災のときは、一番早くても25分ぐらい時間がありました。ある程度の準備ができたということです。

今回のように(津波の到達までに)時間がある場合は、情報収集や準備をしてから逃げるのがいいと思います。


==========
〈プロフィール〉
長尾年恭さん
東海大学・静岡県立大学客員教授
日本地震予知学会会長
専門は火山津波研究


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