4年前、名古屋の入管施設で体調不良を訴え、亡くなったスリランカ人のウィシュマさん。国はウィシュマさんが亡くなるまでの様子を記録した映像が295時間あるとしていますが、遺族側に開示しているのは5時間だけです。遺族がきょう(20日)、全ての開示を求める訴えを起こしました。開示されていない映像に映っているものとは?
入管で死亡 「全面開示」求め遺族提訴
収容された部屋のベッドでうめき声をあげる女性。スリランカ人のウィシュマ・サンダマリさん(当時33)が4年前、名古屋の入管施設で亡くなる直前の様子です。
ウィシュマさんはビザを失い、入管に収容されていましたが、亡くなる約2か月前から嘔吐を繰り返し、点滴や入院を求めていました。
死亡する3週間前の検査では「飢餓状態」を示す値が出ていたことがわかっていますが、点滴などを受けることができませんでした。
国は死因を「病死だが具体的ないきさつを特定することは困難」としています。
2021年5月、スリランカから来日し、ウィシュマさんの変わり果てた姿を目の当たりにした妹たち。
「痩せている」
入管の対応を記録した文書の提供を求めましたが、回答はほぼ黒塗りで、翌年、遺族は入管が適切な治療を提供しなかったとして、国に対し裁判を起こしました。
「姉の“最期”を知りたい」
そして20日、新たな動きがありました。妹たちが向かったのは東京地裁。ウィシュマさんが亡くなる様子を記録した全ての映像の開示を求め新たな裁判を起こしたのです。
国は295時間の映像を保管していますが、これまでに遺族側に開示したのはわずか5時間です。
ウィシュマさん(2021年2月23日 亡くなる11日前)
「病院に持って(連れて)行って、きょうお願い」
「担当さん、セーライン(点滴)、セーライン(点滴)」
入管の職員は一連の訴えを、一時的に収容が解かれる「仮放免」を目的とした「誇張やアピール」と受け止めたといいます。
ウィシュマさんの妹 ワヨミさん(32)
「5時間の映像を観ただけでも、残りの290時間の映像にとてもひどい場面が映っているのではないかと思っています」
実は国の調査報告書には、ウィシュマさんに対し職員が「鼻から牛乳や」と発言したり、「ねえ、薬きまって(キマッて)る?」などと、不適切な言動を繰り返していたことが記されています。しかし、そうした映像は一切、開示されていません。
さらに遺族が不可解だと考えているのは、亡くなる当日の映像です。
調査報告書には、職員が朝8時に「血圧が測れない」と発言したというやりとりが記されていますが…
入館の職員A「測れない?」
入館の職員B「あ、いけました。なんか動いている」
(2021年3月6日午前8時台 亡くなる当日)
映像は、ここですぐにその6時間後に切り替わり、映っていたのは呼びかけに一切反応しないウィシュマさんの姿でした。
入館の職員「(ウィシュマ)サンダマリさん!」
(2021年3月6日午後2時台 亡くなる当日)
ワヨミさん(32)
「開示されない映像には、姉にひどいことをしている、見せられない・隠していることが、映っているのではないでしょうか」
入管庁は取材に対し、「映像には保安・警備体制が記録されていて、(開示は)秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある」としています。
ワヨミさん(32)
「家族にとっては、映像が姉を感じられる唯一のものです。死ぬ時には何もしてあげられなかった。だからせめてビデオを介してその場に行きたい。姉の“最期”を知りたい」
法律のあり方は
小川彩佳キャスター:
遺族は「とにかく姉の最期を知りたい」と、全ての映像の開示を求めています。
小説家 真山仁さん:
入管は丁寧さが足りないと思います。家族が、全ての映像を見たい理由として、「もっとひどいことがあるのではないか」としています。
これに対して「全く問題がない」というのが普通の答えだと思いますが、入管庁は「警備上の理由で見せられない」と回答しているわけで、話がすれ違っています。こうなってしまうのは、開示のルールがないからでしょう。
『われわれ(入管庁)や第三者の弁護士の判断で、これで十分だとするものに関しては、ルールだから(ルールと)「違う」という証拠がない限りは開示できない』で済む話です。
ところが、そこ(ルール)をあやふやにしているから、「隠しているのではないか」と言われてしまう。日本の法律は、こういう点で丁寧さがありません。
小川キャスター:
だから、ご遺族の方は不信感を募らせるばかりですよね。
小説家 真山さん:
裁判所が判断することではないと思います。もっと最初に、ルールを決めるべきだと思います。
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