エンタメ
2025-08-02 12:00

「DA・KA・RA」(1992年)、「夏が来る」(94年)、「ら・ら・ら」(95年)など、1990年代から大ヒット曲の数々を送り出し、55歳を迎えた現在もパワフルに活動している大黒摩季。来年デビュー35周年を迎えるにあたりその前の1年間は「我が道を行かせていただきます!」と宣言した彼女が、ニューアルバム『55 BLACK』(ゴーゴーブラック)を8月2日にリリースした。“大黒摩季流ROCK”が収められた、熱い1枚だ。
【写真】自らロングヘアにハサミを入れる大黒摩季
■大黒摩季を掘り下げて、自分の第一言語は音楽と気づいた
「昨年の大みそかに55歳になって、『2025年は我が道を行きます!』と宣言しましたが、改めて“我が道”とはどんな道なのだろうと考えた時に、ほかの誰かにできることはもうやらなくていいなと。来年はデビュー35周年なので、感謝の思いを込めてファンの方ファーストで活動をしていこうと計画していることもあって、その前の1年は、大黒摩季でなければ書けない楽曲、今の大黒摩季にしか歌えない歌、大黒摩季だからできるパフォーマンスを自由にやらせてもらおうと思いました」
“我が道”を掘り下げて、思い出したのは「大黒摩季の第一言語は歌」ということだった。
「幼いころから私は他人と話すのが苦手で、人としゃべる代わりに歌を歌っていました。そんな私がデビューしてしばらくはメディアの露出をしないでアーティスト活動をしていましたが、独立後は時勢もあってメディアに出て、歌はもちろんですがトークも求められたんです。私なりに学び頑張りましたが、やはり私の第一言語は歌だなと再確認しましたね」
さらに、昨今のコンプライアンスに厳し過ぎる風潮は文化を痩せさせる、と本音を吐露する。
「これまでタイアップの楽曲を数多く作らせていただきましたが、今のご時世はコンプライアンスやガバナンスという名の制限が厳しくなってきました。そうなると、必要とされることに対する喜びは感じつつ、『大黒摩季として、本当にこれでいいのか?』と違和感を覚えることもあるわけです。ポジティブソングの『ら・ら・ら』の影響もあって、音楽界の松岡修造さんのようなポジションになっているのも少し居心地悪かったですね(笑)」
母と仲間を相次いで失ったというショックも彼女に追い打ちをかけた。
「母を4年前に看取って本当にひとりぼっちになった時、どうしようもない喪失感に襲われて、何とか立ち上がったら今度は同い年の中山美穂ちゃんが昨年急逝してしまって…。その直後の12月31日に55歳の誕生日を迎え、私も寄る年波に勝てない面もありますし、ここで自分と対峙しておかなくちゃいけないなと考えました。その答えが『2025年は我が道を行く』ということなんです。所属レコード会社のB ZONEの中で、4番バッターがB’zさんで私はまず塁に出て次につなぐ1番バッター的存在だと思ってきましたが、これまで何回もスマッシュヒットを打っては先輩たちにつないで来たという自負もあるので、この機会にミッションのない自由な道を歩かせてもらって、只々ROCKが大好きでとんがっていたころの自分にもう一度なりたいなと思っていました」
リード曲の「イチヌケタ」は、まさしく現状からの脱出を宣言した曲だ。
「『イチヌケタ』の詞の内容は、歌というより、どこかのメディアを通して言葉で伝えたら要注意人物と目をつけられてしまうような内容です(笑)。でも、ボブ・ディランやニール・ヤング、ブルース・スプリングスティーンといった偉大なロックアーティストたちが、訴えたいことがあるなら音楽で届けられると私に教えてくれました。そんな彼らのように、私もファンの方やゆがんだ世の中で生きあぐねている人たちの小さな声を代弁し、『こんな道もありますよ!』と案内するようなアーティストになりたかったんですよね。ちなみに、『イチヌケタ』は、昨年出演したテレビドラマ『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)の撮影中に作った歌です(笑)。膨大なセリフ量に難解な芝居を要求されてパンク寸前状態になったら、サビのフレーズが頭の中に浮かんで離れませんでした!」
■デビュー以来、歌ってきたのは等身大の赤裸々な自分
長年のファンの胸を熱くするのは、3曲目に収録されている「別れません私から消えませんあなたから」だろう。これは、大黒の名曲「別れましょう私から消えましょうあなたから」の主人公の32年後を描いた歌だ。
「以前、『別れましょう私から~』のように、“別れてくれる女”はイイ女で、一番怖いのは“別れない女”だと、男性のイベンターさんが私に話してくれたことがあったんです(笑)。彼は『いつか“別れない女”を歌ったらいい。ただ、若いときに“別れない女”を歌うと意地を張ってる強がるだけの女の歌になってしまうから、熟年になってから歌ったら効力があるはず』と助言を授けてくれました。そのアドバイスがふと思い出されて、おっ!そろそろじゃない?!と。それで若いときに歌った『別れましょう私から~』を楽しくオマージュしたいなと考えて『別れません私から~』を作りました」
大黒と同世代の女性を歌った「別れません私から~」の歌詞は、綿密にリサーチを重ねて紡いだという。
「淡々とした日々を過ごしていたら親の介護が始まって、そのストレスで夫に当たれども、夫は逃げるようにゴルフに行ってしまって、イライラしていたら、大人になりかけている子どもに『仲良くして!』と注意される…、という生活を送っているなど私と同年代の女性達の気持ちを沢山預かって歌いました。『別れましょう私から~』の主人公の32年後の姿です。多くの同級生にリサーチして詞を書いたのですが、今作のアルバムを共同プロデュースしてくれているキーボードの敏君(柴田敏孝)はまだ若くて臨場感がないから『“看取ってあげる”なんて、この女性は怖すぎる』と引いていましたし、ライブでもこの曲を歌うと、女性が笑っているのに対して男性は青ざめています(笑)。大黒摩季が帰ってきたなと自分でも思う曲ですね。ぜひ『別れましょう私から~』と『別れません私から~』をセットで聴き比べしてください!」
Princeの「Purple Rain」のような曲を目指して作った「oh my sister」も力作だ。
「アルバム作りの合間に敏君と、Princeとジャニス・ジョプリンが生きていて『Purple Rain』を演奏したらこのうえなくかっこいいだろうと話したことがありました。そんな『Purple Rain』を二人で何度も聴きながら、ツアーに参加してくれることになった佐藤タイジさん(THEATRE BROOK)のギターで聴いてほしいなと考えていたんです。そのうちに、敏君がなんとなくコード進行を弾きだしたらメロディが降ってきました。
それは、トランスジェンダーの友人が世間から白い眼を向けられて、それでも無理やりポジティブに生きていくことがつらいものかと、泣きながら私に思いを吐き出した2日後のことでした。そんな彼女に面と向かって『それでも生きていくしかないのよ』とは言えないと思っていたら、歌になりました。鋭利な言葉が飛び交う現実世界に嫌気がさして、インターネット上のバーチャルな空間に救いを求めたら返り討ちにあい、自ら命を絶とうとする人も少なくありません。そんな人たちに『どんなに傷つけられても私だけはそばにいるよ』というメッセージを込めた歌です」
そのほか、しっかり働いて蓄えもある独身女子がお目当ての男子と豪遊する“若干イタイ状況も笑ってアリにした”という「イチャイチャしようよ▽」(▽=ハートマーク)や、佐藤タイジ、大黒がリアルファンというルーツROCKに根差したバンド・QUORAMのギター北川遊太によるシュールなギターが胸にしみるバラード「通り雨のリグレット」など、書き下ろしの新曲が収録されている。
「23歳でデビューして55歳になって、病気で間に少しブランクもあれど、34年間、その時その時の等身大の自分を歌ってきました。今20代半ばの女性は私がやはり20代半ばで歌った『夏が来る』を聴いてもらえれば共感できると思いますし、30歳前後の方なら私が34歳に差し掛かるときに歌った『夏が来る、そして』がドンピシャだと感じていただけるはず。今回も55歳の赤裸々祭になっています(笑)。立ち止まったり息が詰まったりしたら“女子の関所”のような私の歌を聴いて、通行手形を手にして自信を持って歩みを進めていってほしいですね」
アルバム名を冠した『MAKI OHGURO LIVE TOUR 2025 - 55 BLACK -』は、すでに4月から開催中だ。
「アルバムを先に発表してからツアーに入るのが通常だと思いますが、今回はあえて順序を逆にしました。来場してくださったお客様たちからしてみると全然知らない曲のオンパレードとなっているわけですが、だからこそ皆さんとことん集中して歌を聴いてくださいます。何度もライブに足を運んでくださっているファンの方は、まだアルバムが出ていないのにすでに曲を覚えて一緒に歌ったりコブシを挙げてくださったりしていて、初めて来た方もつられている状態です(笑)」
知らない曲を聴いてもらうことで気づいたこともあったと言う。
「たとえば外国人のアーティストが先行プロモーションで来日公演をするとき、セットリストが知らない曲ばかりだったとしても、そのライブが良かったらCDを買ってみようとなりますよね。それと同じことが起きているなと感じていますし、これが音楽のユーザーとしての衝動としてあるべき姿で、そんな場面に立ち合えていることにグッと来ています。やはり今の状況からイチヌケてよかったです(笑)」
ニューアルバムはBIG盤(CD+DVD)とSTANDARD盤CDの2形態がある。
「世界的写真家のLeslie Keeさんが撮影してくださったフォトブックレットは両形態とも付いていますが、BIG盤はA4サイズで迫力満点ですし、髪をバッサリ切ったときの映像が収録されている特典DVD付きになっています。20年くらい続けていたロングヘアは大黒摩季のトレードマークのようなものでしたが、母が亡くなって、放心状態でも現実はつきつけられる訳で、親のない実家をどうするかとか年金や銀行口座の処理とかという問題に様々直面して、人生の煩わしさを感じていたときに身軽になりたいなと感じて思いきりました。切ってみたらシャンプーも楽ですし、髪の毛を乾かす時間も短いですし、合理的でしたね(笑)。女性がバッサリ髪を切るそんな大事な瞬間は尊いよ、とLeslieさんが写真に撮ってくださったんです。切り落とした赤い髪が映えるのはやっぱり肌の色だ!と言われて、Leslieさんにうまく脱がされました(笑)」
自由を求め、大好きなROCKにこだわって作った『55 BLACK』。しがらみの多い世界から“イチヌケタ”大黒摩季が、ストレスだらけの世の中の対処法を教えてくれる作品に仕上がっている。そんな彼女は『55 BLACK』と対をなす『55 RED』の準備にも取りかかっている。次作は、約35年にわたるミュージシャン人生で出会ったラテン音楽や、現在のめり込んでいるフラメンコなど、今の大黒摩季を作り上げている“Chill”で包容力のある振れ幅の広い音楽を集めたアルバムになるという。関所に差し掛かっても摩季姐が通行手形を用意して寄り添い、勇気づけてくれると思うと、抑圧的な令和の世も少し肩の力を抜いて歩いていけそうだ。
取材・文:森中要子
■大黒摩季『55 BLACK』収録曲
01. イチヌケタ
02. タッチダウン~featuring Asami from LOVEBITES~
03. 別れません私から消えませんあなたから
04. イチャイチャしようよ
05. 通り雨のリグレット
06. GOLDEN QUEEN(Miss International Queen Japan 公式応援ソング)
07. パーリー◇パーリー(◇=クラッカーマーク)
08. なつかしい日々(『劇場版「ふにゃ~り日和」ねこ駅長 さくらの物語』主題歌)
09. oh my sister
~featuring Taiji Sato from Theatre Brook, ComplianS~
10. STAND UP!!★(powered by 霞ヶ関キャピタル)
−BonusTrack −
11. イチヌケタ~Single Edit~
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■大黒摩季を掘り下げて、自分の第一言語は音楽と気づいた
「昨年の大みそかに55歳になって、『2025年は我が道を行きます!』と宣言しましたが、改めて“我が道”とはどんな道なのだろうと考えた時に、ほかの誰かにできることはもうやらなくていいなと。来年はデビュー35周年なので、感謝の思いを込めてファンの方ファーストで活動をしていこうと計画していることもあって、その前の1年は、大黒摩季でなければ書けない楽曲、今の大黒摩季にしか歌えない歌、大黒摩季だからできるパフォーマンスを自由にやらせてもらおうと思いました」
“我が道”を掘り下げて、思い出したのは「大黒摩季の第一言語は歌」ということだった。
「幼いころから私は他人と話すのが苦手で、人としゃべる代わりに歌を歌っていました。そんな私がデビューしてしばらくはメディアの露出をしないでアーティスト活動をしていましたが、独立後は時勢もあってメディアに出て、歌はもちろんですがトークも求められたんです。私なりに学び頑張りましたが、やはり私の第一言語は歌だなと再確認しましたね」
さらに、昨今のコンプライアンスに厳し過ぎる風潮は文化を痩せさせる、と本音を吐露する。
「これまでタイアップの楽曲を数多く作らせていただきましたが、今のご時世はコンプライアンスやガバナンスという名の制限が厳しくなってきました。そうなると、必要とされることに対する喜びは感じつつ、『大黒摩季として、本当にこれでいいのか?』と違和感を覚えることもあるわけです。ポジティブソングの『ら・ら・ら』の影響もあって、音楽界の松岡修造さんのようなポジションになっているのも少し居心地悪かったですね(笑)」
母と仲間を相次いで失ったというショックも彼女に追い打ちをかけた。
「母を4年前に看取って本当にひとりぼっちになった時、どうしようもない喪失感に襲われて、何とか立ち上がったら今度は同い年の中山美穂ちゃんが昨年急逝してしまって…。その直後の12月31日に55歳の誕生日を迎え、私も寄る年波に勝てない面もありますし、ここで自分と対峙しておかなくちゃいけないなと考えました。その答えが『2025年は我が道を行く』ということなんです。所属レコード会社のB ZONEの中で、4番バッターがB’zさんで私はまず塁に出て次につなぐ1番バッター的存在だと思ってきましたが、これまで何回もスマッシュヒットを打っては先輩たちにつないで来たという自負もあるので、この機会にミッションのない自由な道を歩かせてもらって、只々ROCKが大好きでとんがっていたころの自分にもう一度なりたいなと思っていました」
リード曲の「イチヌケタ」は、まさしく現状からの脱出を宣言した曲だ。
「『イチヌケタ』の詞の内容は、歌というより、どこかのメディアを通して言葉で伝えたら要注意人物と目をつけられてしまうような内容です(笑)。でも、ボブ・ディランやニール・ヤング、ブルース・スプリングスティーンといった偉大なロックアーティストたちが、訴えたいことがあるなら音楽で届けられると私に教えてくれました。そんな彼らのように、私もファンの方やゆがんだ世の中で生きあぐねている人たちの小さな声を代弁し、『こんな道もありますよ!』と案内するようなアーティストになりたかったんですよね。ちなみに、『イチヌケタ』は、昨年出演したテレビドラマ『ブラックペアン シーズン2』(TBS系)の撮影中に作った歌です(笑)。膨大なセリフ量に難解な芝居を要求されてパンク寸前状態になったら、サビのフレーズが頭の中に浮かんで離れませんでした!」
■デビュー以来、歌ってきたのは等身大の赤裸々な自分
長年のファンの胸を熱くするのは、3曲目に収録されている「別れません私から消えませんあなたから」だろう。これは、大黒の名曲「別れましょう私から消えましょうあなたから」の主人公の32年後を描いた歌だ。
「以前、『別れましょう私から~』のように、“別れてくれる女”はイイ女で、一番怖いのは“別れない女”だと、男性のイベンターさんが私に話してくれたことがあったんです(笑)。彼は『いつか“別れない女”を歌ったらいい。ただ、若いときに“別れない女”を歌うと意地を張ってる強がるだけの女の歌になってしまうから、熟年になってから歌ったら効力があるはず』と助言を授けてくれました。そのアドバイスがふと思い出されて、おっ!そろそろじゃない?!と。それで若いときに歌った『別れましょう私から~』を楽しくオマージュしたいなと考えて『別れません私から~』を作りました」
大黒と同世代の女性を歌った「別れません私から~」の歌詞は、綿密にリサーチを重ねて紡いだという。
「淡々とした日々を過ごしていたら親の介護が始まって、そのストレスで夫に当たれども、夫は逃げるようにゴルフに行ってしまって、イライラしていたら、大人になりかけている子どもに『仲良くして!』と注意される…、という生活を送っているなど私と同年代の女性達の気持ちを沢山預かって歌いました。『別れましょう私から~』の主人公の32年後の姿です。多くの同級生にリサーチして詞を書いたのですが、今作のアルバムを共同プロデュースしてくれているキーボードの敏君(柴田敏孝)はまだ若くて臨場感がないから『“看取ってあげる”なんて、この女性は怖すぎる』と引いていましたし、ライブでもこの曲を歌うと、女性が笑っているのに対して男性は青ざめています(笑)。大黒摩季が帰ってきたなと自分でも思う曲ですね。ぜひ『別れましょう私から~』と『別れません私から~』をセットで聴き比べしてください!」
Princeの「Purple Rain」のような曲を目指して作った「oh my sister」も力作だ。
「アルバム作りの合間に敏君と、Princeとジャニス・ジョプリンが生きていて『Purple Rain』を演奏したらこのうえなくかっこいいだろうと話したことがありました。そんな『Purple Rain』を二人で何度も聴きながら、ツアーに参加してくれることになった佐藤タイジさん(THEATRE BROOK)のギターで聴いてほしいなと考えていたんです。そのうちに、敏君がなんとなくコード進行を弾きだしたらメロディが降ってきました。
それは、トランスジェンダーの友人が世間から白い眼を向けられて、それでも無理やりポジティブに生きていくことがつらいものかと、泣きながら私に思いを吐き出した2日後のことでした。そんな彼女に面と向かって『それでも生きていくしかないのよ』とは言えないと思っていたら、歌になりました。鋭利な言葉が飛び交う現実世界に嫌気がさして、インターネット上のバーチャルな空間に救いを求めたら返り討ちにあい、自ら命を絶とうとする人も少なくありません。そんな人たちに『どんなに傷つけられても私だけはそばにいるよ』というメッセージを込めた歌です」
そのほか、しっかり働いて蓄えもある独身女子がお目当ての男子と豪遊する“若干イタイ状況も笑ってアリにした”という「イチャイチャしようよ▽」(▽=ハートマーク)や、佐藤タイジ、大黒がリアルファンというルーツROCKに根差したバンド・QUORAMのギター北川遊太によるシュールなギターが胸にしみるバラード「通り雨のリグレット」など、書き下ろしの新曲が収録されている。
「23歳でデビューして55歳になって、病気で間に少しブランクもあれど、34年間、その時その時の等身大の自分を歌ってきました。今20代半ばの女性は私がやはり20代半ばで歌った『夏が来る』を聴いてもらえれば共感できると思いますし、30歳前後の方なら私が34歳に差し掛かるときに歌った『夏が来る、そして』がドンピシャだと感じていただけるはず。今回も55歳の赤裸々祭になっています(笑)。立ち止まったり息が詰まったりしたら“女子の関所”のような私の歌を聴いて、通行手形を手にして自信を持って歩みを進めていってほしいですね」
アルバム名を冠した『MAKI OHGURO LIVE TOUR 2025 - 55 BLACK -』は、すでに4月から開催中だ。
「アルバムを先に発表してからツアーに入るのが通常だと思いますが、今回はあえて順序を逆にしました。来場してくださったお客様たちからしてみると全然知らない曲のオンパレードとなっているわけですが、だからこそ皆さんとことん集中して歌を聴いてくださいます。何度もライブに足を運んでくださっているファンの方は、まだアルバムが出ていないのにすでに曲を覚えて一緒に歌ったりコブシを挙げてくださったりしていて、初めて来た方もつられている状態です(笑)」
知らない曲を聴いてもらうことで気づいたこともあったと言う。
「たとえば外国人のアーティストが先行プロモーションで来日公演をするとき、セットリストが知らない曲ばかりだったとしても、そのライブが良かったらCDを買ってみようとなりますよね。それと同じことが起きているなと感じていますし、これが音楽のユーザーとしての衝動としてあるべき姿で、そんな場面に立ち合えていることにグッと来ています。やはり今の状況からイチヌケてよかったです(笑)」
ニューアルバムはBIG盤(CD+DVD)とSTANDARD盤CDの2形態がある。
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自由を求め、大好きなROCKにこだわって作った『55 BLACK』。しがらみの多い世界から“イチヌケタ”大黒摩季が、ストレスだらけの世の中の対処法を教えてくれる作品に仕上がっている。そんな彼女は『55 BLACK』と対をなす『55 RED』の準備にも取りかかっている。次作は、約35年にわたるミュージシャン人生で出会ったラテン音楽や、現在のめり込んでいるフラメンコなど、今の大黒摩季を作り上げている“Chill”で包容力のある振れ幅の広い音楽を集めたアルバムになるという。関所に差し掛かっても摩季姐が通行手形を用意して寄り添い、勇気づけてくれると思うと、抑圧的な令和の世も少し肩の力を抜いて歩いていけそうだ。
取材・文:森中要子
■大黒摩季『55 BLACK』収録曲
01. イチヌケタ
02. タッチダウン~featuring Asami from LOVEBITES~
03. 別れません私から消えませんあなたから
04. イチャイチャしようよ
05. 通り雨のリグレット
06. GOLDEN QUEEN(Miss International Queen Japan 公式応援ソング)
07. パーリー◇パーリー(◇=クラッカーマーク)
08. なつかしい日々(『劇場版「ふにゃ~り日和」ねこ駅長 さくらの物語』主題歌)
09. oh my sister
~featuring Taiji Sato from Theatre Brook, ComplianS~
10. STAND UP!!★(powered by 霞ヶ関キャピタル)
−BonusTrack −
11. イチヌケタ~Single Edit~
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