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おきて破りの“選挙ハック” 道路を挟んで“違う選挙区”に…脱MAGAで崖っぷちトランプ氏が繰り出す一手 深まるアメリカの分断と怒り【報道特集SP トランプ2.0とハックされる世界】

海外
2026-10-12 05:00

第2次トランプ政権発足からまもなく2年。ときに強引にルールを曲げる手法はまるで世界をハックしているかのよう。


【写真で見る】“区割り変更”で道路挟んで「別の選挙区」に…端から端まで車で3時間


中間選挙を前に進行する「ゲリマンダー」=“区割り変更”では、道路を挟んだ同じ街が違う選挙区になるなど、選挙のあり方がねじ曲げられつつある。


トランプ氏の“ハック”は世界秩序をも根底から揺るがしている。トランプ政権でアメリカは、そして世界はどう変わろうとしているのか。


揺らぐ「MAGA」  “支持率低下”に歯止めかからず

アメリカ トランプ大統領(共和党大会・9月9日)
「イランが核兵器を持っても良いのか?絶対にダメだ。私が正しいし私が勝つ」


強硬な移民政策や世界各国への関税、それにイラン戦争。トランプ大統領の予測不能な政策に世界が翻弄されてきた。


9月に行われた共和党大会には、全米から多くの支持者が駆け付けた。


支持者
「トランプさんを愛しています、100%。今までで最高の大統領です」
「国境を封鎖し、減税を行い、今はアメリカを世界最大の超大国にしようとしてくれています」


物価高への対応について評価を聞くと…


支持者
「今苦しんでいる人たちもいますが、トンネルの先には光が見えています」


熱烈な支持を集めるトランプ大統領。
通常は大統領選挙の前に行われる党大会だが、今回、中間選挙前という異例の時期に初めて開いた。


トランプ大統領
「『中間選挙の党大会なんて誰が行くんだ。絶対に集まらない』と言われていた。だが会場は満員だ。会場の外にも同じ数の人が集まってる」


村瀬健介キャスター
「会場が『満席だ』と主張していますが、実際には席が余っています」
「『外には入りきれない人たちで行列ができている』と言っていますが、行列は見えません」


トランプ大統領が言う「聴衆」の姿はなかった。


2025年1月に発足した第2次トランプ政権は、支持率の低下に歯止めがかからない。


「アメリカをもう一度偉大に(MAGA=Make America Great Again)」。実は今、そのスローガンを見限った人が相次いでいるのだ。


「猛烈に腹が立った」連邦政府職員 “MAGA離れ”で孤立

ジョージア州アトランタに住む連邦政府の職員、ロン・ケリーさん。かつては軍に所属し、イラクやアフガニスタンにも駐留した。


トランプ氏の政界デビュー以来、熱狂的な「MAGA派」だった。


元MAGA派 ロン・ケリーさん
「(トランプ氏が初出馬した)2016年には、ワシントンの政治にうんざりしていました。私たちのための政治ではありませんでしたから。政治のアウトサイダーを求めていたのでトランプ氏に投票しました」


ケリーさんは過去3回の大統領選でトランプ氏に投票した。しかし、ある政策をきっかけにMAGAに見切りをつけた。


それは、トランプ大統領による連邦政府の職員の解雇など政府機関の大幅な縮小だ。


ロン・ケリーさん
「最初に心が離れたきっかけは、就任後の初めての大統領令が、私たち連邦政府の職員に向けられたものだったことです。それ以前にも納得できないことがありましたが、あの大統領令が完全に決定打となりました」


ケリーさん自身の解雇は避けられたが、多くの同僚が職場を去った。さらに追い打ちをかけたのが移民の取り締まりの強化だ。


移民・税関捜査局(ICE)の職員が、移民を支援していた女性を射殺するなど「強引な捜査手法だ」と反発が高まっている。


ロン・ケリーさん
「当局はホームセンターなどの駐車場に張り込むようになりました。そこに日常的に日雇い労働者が集まっていたからです。当局が頻繁にやって来るのを見て、私は『ここにいる人たちを守らなくてはいけない』と思ったのです。人々の扱い方に猛烈に腹が立ちました」


MAGA派から離れると、周囲から孤立するようになったという。


ロン・ケリーさん
「本当に辛かったのは友人や家族を失い、一からやり直さなければならなかったことです。皆、憎んでいるとまでは言いませんが、口を利いてくれません。家族でさえ私が変わってしまったことが気に入らないのです。今でも話をしてくれるのは父だけです」


「いかに有害か…」元MAGA派の支援団体 “MAGA離れ増”を実感

ケリーさんのような人たちを支援する団体もある。


「Leaving MAGA=MAGAを去る」という団体で、相談を受けているスティーヴン・フランシージさんだ。


「脱MAGA派」を支援 スティーヴン・フランシージさん
「トランプ氏やMAGAの政策が自分に悪い影響を及ぼし、どうしたらいいか分からないと口にする人が増えています。自分が支持していたものによって傷付けられたときに、私たちの団体が手助けに入ります」


いま、MAGA派から離れる人が増えていると感じている。


スティーヴン・フランシージさん
「トランプ氏やMAGAが、いかに有害であるか気づき始めている人が増えていると思います。依然として完全に心酔している人たちもいますが、そこから目覚める人がどんどん増えています」


道路を挟んで“違う選挙区”に…進行する「ゲリマンダー」とは?

11月3日に投票が行われる「中間選挙」。
上院は100議席のうち35議席、下院は435議席すべてが改選される。現在は上院・下院ともに共和党が過半数を上回っている。


しかし、地元メディアによると、上院・下院いずれも接戦となっていて、どちらの党が過半数を得るのか見通せない。


そこでトランプ氏は「選挙ハック」とも言える“おきて破り”の一手を繰り出した。


村瀬キャスター
「レイバーデイ(労働者の日)という休日にあたりますが、ダラス郊外の会場では民主党の集会が開かれています」


会場の駐車場で候補者の看板を立てる男性がいた。


ケビン・バージ氏。テキサス州の選挙区で民主党から下院議員に立候補している。


テキサス24区で立候補 民主党 ケビン・バージ氏
「私たちのスタッフは、一軒一軒訪ねて有権者と対話するなど、やる気に満ち溢れています。『ゲリマンダー』がここテキサスから全国的なニュースになったからです」


バージ氏の言う「ゲリマンダー」とは、選挙区の区割りを特定の候補者に有利な形に変えてしまうものだ。


例えば、民主党の支持者が多い選挙区を分割して少数派になるよう区割り変更し、共和党の当選を狙う。


テキサス州では2025年、トランプ政権の意向を受け、5つの選挙区が共和党に有利な形に変更された。


ダン・バリオス氏は、民主党からテキサス32区で民で下院議員に立候補している。まさにゲリマンダーされた選挙区だ。


テキサス32区は、もともと大都市ダラスを中心とした「都市型」の選挙区だ。民主党は4期連続で議席を確保してきた。


しかし、今回のゲリマンダーでダラスはわずかとなった一方、東に大きく伸び、農村部が飛躍的に増えた。都市部に強いとされる民主党の候補者に極めて不利な状況だ。


テキサス32区で立候補 民主党 ダン・バリオス氏
「選挙区の端から端まで車で約3時間かかります。これが“ゲリマンダー”です。共和党を勝たせるためです。100%政治的です。疑いようがありません」


バリオス氏が選挙区を案内してくれた。


民主党 ダン・バリオス氏
「道路を挟んで2つの選挙区に分かれています」


ゲリマンダーで同じ街が2つに引き裂かれていた。


民主党 ダン・バリオス氏
「まったく意味がわかりません。同じ地区・同じ街に住む人たちです。あのアパートやこれらの家に住む人たちは、同じ店で買い物をして同じ教会や学校に通っています。コミュニティの分断を生み、良くないことです。真の代表制とは言えません」


この日、バリオス氏は新たに選挙区に組み込まれた別の地域にも向かった。


同じ選挙区でも異なる景色  共和党有利の「ゲリマンダー」の結果で…

村瀬キャスター
「全く風景が異なる場所です。農家が点在している、典型的なアメリカの田舎町にやってきました」


車を走らせること1時間半以上。
ダラスの中心から100キロ以上離れた場所で酪農を営むボビー・コールさん。この地で代々続く酪農家だ。コールさんは、未曽有の物価高に直面する窮状を訴えた。


酪農家 ボビー・コールさん
「私たちが手にするもの全てが値上がりしています。酪農をするための、全てのものです。カナダに対する関税が上げられたので、輸入する鉄パイプも値上がりしました。肥料や燃料の価格も上がっています」


一方、民主党への視線も厳しかった。


ボビー・コールさん
「伝統的に民主党は農村部や労働者階級を支援していました。率直に言って、今は両党とも労働者階級を見捨てているように感じます。私にはデータセンターやビットコインも関係ありません。私にとって大切なのは、日々の支払いをして牧場を守り、孫たちを大学に通わせて教育を受けさせることです」


民主党 ダン・バリオス氏
「ここに来て、地域の課題を理解しようとしています。ゲリマンダーされた選挙区で勝つためには人々に耳を傾けることが必要です。トランプ政権の政策は破綻していて、ゲリマンダーに頼らざるを得ないのです。しかし、裏目に出るはずです」


――選挙システムをハッキングするようなものではないですか?


民主党 ダン・バリオス氏
「ハッキングというよりは抜け道を使う方法です。それをハッキングと定義するなら、その通りです」


中間選挙の結果次第では、トランプ大統領による新たな「選挙ハック」が起きるのではないかと危惧する人もいる。


「大統領選に3度勝利」バイデン氏勝利の大統領選は“不正選挙”主張

2020年の大統領選で民主党のバイデン氏に敗れたトランプ大統領。「選挙は不正だった」と主張し、いまだに敗北を受け入れていない。


トランプ大統領(共和党大会・9月9日)
「共和党員は常に非常にうまくやっている。私たちは大統領選に3度勝利しました。負けるはずがない」


当時、不正の現場としてトランプ陣営から名指しされたのがジョージア州だった。


2026年1月、トランプ政権下のFBI(連邦捜査局)は、ジョージア州の選挙関連施設を捜索。捜査の対象は6年前の大統領選とみられている。


当時、州の選挙管理の責任者だったガブリエル・スターリング氏。


当時 ジョージア州選挙管理の責任者 ガブリエル・スターリング氏
「共和党にとって非常に厳しい選挙になるでしょう。トランプ氏はまた『操作され盗まれた選挙』と言い出すでしょう。(トランプ氏は)負けると『不正だ』と言う傾向があるようですが、これが彼が唯一受け入れられる結果なのです」


「怒り」で煽り、縛り付ける…今の選挙の在り方とは?

選挙後、トランプ大統領はジョージア州の選挙管理のトップに対し、持論を展開した。


トランプ大統領(2020年大統領選後の電話会議)
「いいか、私がやりたいのはこれだ。ただ1万1780票を見つけ出したいだけだ。1票でも相手を上回ればいい」


ジョージア州ラフェンスパーガー州務長官
「裁判所が判断するのです。私たちは自分たちの数字に確信を持ち、正しい数だと信じています」


トランプ大統領
「なぜ君はそんなことを言うんだ」


ジョージア州の州務長官
「大統領、ソーシャルメディアに関してあなたが抱えている問題は、人々が何でも言えるということです」


トランプ大統領
「いや違う。ソーシャルメディアではない。トランプメディアだ」


ジョージア州の州務長官
「私たちは正確な選挙を行ったと信じています」


トランプ大統領
「いや、君たちはやっていない。やっていない。正しい選挙とはほど遠い」


トランプ大統領はその後も、「不正選挙」だと主張。信じた支持者たちはジョージア州をSNSなどで攻撃し続けた。


共和党員でありながら、トランプ大統領を批判してきたスターリング氏。今の選挙の在り方に疑問を投げかける。


ガブリエル・スターリング氏
「極左も極右も『怒り』を煽り続けることで、人々を同じ主張に縛り付けているのです。冷静で深みのある意見は、多くのクリックや『いいね!』を獲得できません。退屈だからです。今や人々はこの『怒りの増幅マシーン』の中で暮らし、(極左・極右)双方がそれを利用している」


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