イスラエルがイラン各地にある核関連施設などを攻撃し、イランのメディアは首都があるテヘラン州で78人が死亡したと伝えました。イラン側は報復を宣言。衝突の拡大が懸念されます。
イスラエルがイラン攻撃 78人死亡 核施設内部で汚染か
中東で再び緊張が高まっています。 イスラエルは13日未明、イラン全土100か所以上に対して突然、空爆を行いました。
イスラエル ネタニヤフ首相
「先ほど、イスラエルは軍事作戦『ライジング・ライオン作戦』を開始した。この作戦は脅威を排除するまで何日も継続される」
今回標的となったのは、首都テヘランや中部ナタンズの核関連施設や軍事施設など数十か所。
狙われたウラン濃縮施設の方向からは黒い煙があがっていました。
イランメディアは原子力庁報道官の話として「ナタンズの核関連施設の内部で、放射性物質と化学物質による汚染が確認された」と報じました。
また、この攻撃で革命防衛隊のトップや軍の参謀総長、核科学者らが死亡したということです。
被害は市民にも…
テヘラン市民
「足の骨を折りました。 音と共にがれきが落ちてきて車に閉じ込められました」
イランの政府系メディアはテヘラン州だけで78人が死亡したと伝えています。イランに対する攻撃の理由について、イスラエルのネタニヤフ首相は…
イスラエル ネタニヤフ首相
「イランは非常に短期間で核兵器を製造する可能性がある。それは1年以内かもしれないし、数か月以内かもしれない」
イランの最高指導者・ハメネイ師は報復を宣言。イランはドローン100機以上をイスラエルに向けて発射しましたが、全て迎撃されたということです。
アメリカ「関与していない」核協議の行方は
高まる緊張の中で今後のカギを握るのがアメリカです。
アメリカのルビオ国務長官は「イスラエルはイランに対して、一方的な行動をとった。アメリカは攻撃に関与していない」と、イスラエルと一定の距離をとる姿勢を示していました。
イスラエルが攻撃を始める前の12日、トランプ大統領は…
Q.イスラエルによるイラン攻撃はどの程度差し迫っているのでしょうか?
トランプ大統領
「差し迫っているとは言いたくないが可能性は大いにある」
と、イスラエルに自制を呼びかけていました。
アメリカはイランと核開発をめぐる交渉を続けていて、15日には協議が予定されていましたが、先行きが見通せない情勢となっています。
イスラエルが先制攻撃 イランは報復
喜入友浩キャスター:
イランにとって核開発は、『政権の体制維持の切り札』と考えています。
一方、イスラエルはこのイランの核開発を『国家の存亡を脅かす』として危険視していました。
そんな中、イスラエルは今回、“自衛”という目的で、このイランの核施設や軍の幹部などを狙った先制攻撃を行ったわけです。
これに大きく関わってくるのがアメリカです。そもそもイラン核合意を崩壊させたのはアメリカですが、この数か月はその立て直しに向けて協議を続けていました。15日にも交渉が行われる予定でしたが、その直前に攻撃が行われたという形になります。アメリカにとっては『メンツを潰された』とも見えますが、今後アメリカはどう出るのでしょうか。
JNNワシントン支局 樫元照幸支局長:
トランプ大統領は日本時間13日夜にホワイトハウスで国家安全保障会議を開き、対応を協議します。また、イスラエルのネタニヤフ首相とも電話会談を行う見通しです。
トランプ大統領はCNNテレビなどの取材に対し、イスラエルへの支持を表明しました。
一方、イランに対しては60日間の交渉期限を通告していたと明らかにしましたが、その期限が過ぎたことも明らかにしています。
ただ、イランに対してSNSで「手遅れになる前に取引をしろ。多分まだ2回目のチャンスはある」と発信し、話し合いによる「核問題をめぐる合意」を迫った形です。
15日に行われる予定の協議についてトランプ政権関係者は「現時点では予定通り行われることを期待している」と報じられています。
イスラエルの軍事攻撃を黙認をして追い込まれた、イランとのディールを成功させたい。そんな思惑が見てとれますが、自体は間違いなくより厳しい状況に陥っています。
核協議中に…なぜこのタイミング?
上村彩子キャスター:
アメリカがイランと交渉を続けている中で、なぜイスラエルはこのタイミングで攻撃に踏み込んだのでしょうか?
23ジャーナリスト 須賀川拓さん:
いろいろな要因がありますが、大きく2つのポイントがあると思います。
その一つが「核交渉」です。イランの核交渉というのは、当然イランの核開発をわずかながらでも前進させるものです。そうなるとイスラエルとしては絶対阻止をしたいし、アメリカも実はイスラエルと同じ方向を向いています。
そのため、アメリカは今回のイスラエルの攻撃をほぼ黙認していたのです。交渉のタイミングだったからこそ、(今回の攻撃を黙認した)一つの背景としてあるわけです。
もう一つは国内政治です。
イスラエルの周囲は敵国だらけなのですが、レバノンの「ヒズボラ」やガザ地区の「ハマス」などは弱体化していて、もはや敵ではない存在となっています。
ところがイスラエルのネタニヤフ首相は現在、汚職疑惑で裁判を抱えているので、(ほかに目を向けるため)外に敵がいた方が好都合です。
つまり“敵がいないと国内政治をまとめきれない”といった事情もあるわけです。
“ドローン100機” 報復の連鎖に?
喜入キャスター:
今回、イラン側はドローンを100機以上発射したという情報もありますが、今後攻撃の応酬になるのでしょうか。
23ジャーナリスト 須賀川拓さん:
「ドローン100機」と聞くと、すごく多いように聞こえますが、実はそれほど大きな攻撃ではありません。
「抑制的」、もしくは「報復の序章」など、様々な見方がありますが、少なくとも、今回のドローン攻撃だけで「報復」というのは、さすがに弱腰過ぎると思います。イラン側としても国内政治を抑えきれない部分があるのです。
一方で抑制的にすることによって、イスラエル側の今回の攻撃は「不当なものである」というスタンスを明確にすることができます。
つまり、あえてエスカレーションさせないことでイスラエルを際立たせることができるという道も残されているのです。
ただ、この挑発に乗って報復合戦になってしまうと、当然ネタニヤフ首相の思うつぼになってしまいます。
今後、どのようにエスカレーション・ラダーを登っていくのかが注目されます。
重要なのは今回、イスラエルがイランという主権国家に対して、首都を攻撃し、軍幹部などを狙うという、実質的な斬首作戦を行いましたが、これが黙認されてしまえば、「武力によって先制攻撃してもいい」というハードルが一気に下がってしまいます。
自衛の名を借りたイスラエルの今回の行動は、前例を作ってしまう非常に危うい状態なのではないかと思います。
上村キャスター:
世界や日本への影響も心配です。
23ジャーナリスト 須賀川拓さん:
中東がいきなり火の海になることはありませんが、やはり原油、ガソリン価格、さらに周辺海域における海上輸送にも今後影響が出てくるのではないかと思います。
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