1日は「防災の日」です。都内では首都直下地震を想定した訓練が行われるなど、防災について学ぶ一日となりました。熊本地震から1か月あまり。原因とされる断層帯には、実は、まだ動いていない「割れ残り」と呼ばれる部分があります。この「割れ残り」に潜むリスクを検証しました。
再び大地震も?断層「割れ残り」
最大震度7を観測した熊本地震。激しい揺れとともに、田んぼの地面が大きくずれ動きます。
一瞬にして生じた、地面の大きな「ずれ」。今回の地震では、この「ずれ」に沿うように被害が集中しました。
八代市にある、八代神社。境内には今も、地面が食い違ったような跡が残っています。
八代神社 小林雄彦宮司
「こういうところにもヒビが。だんだん大きくなってきている」
Q.当初(地震発生直後)よりも?
「全然大きい」
さらに、一直線に伸びる大きな段差も。
八代神社 小林宮司
「ここだけ地面が隆起して、もしくは沈んでいる。大体60~70cmぐらいはあがっている。昔から境内を日奈久断層が走っているだろうというのは言い伝えじゃないんですけど、実際に地震が起きて、どこを走っているのか分かった。神様のお力というか、これぐらいの被害で済んだ」
この神社の下を通っていたのが、益城町付近から海側に伸びる「日奈久断層帯」です。
10年前の熊本地震では北側の一部が動き、今回はさらに南西側の区間が活動したとされています。
しかし、実はまだ動いていない「割れ残り」の区間が残っています。
長さおよそ80kmにおよぶ断層帯のうち、南西側のおよそ40kmは「割れ残り」とみられ、再び大きな地震を引き起こす可能性も指摘されています。
耐震でも防げず“断層のずれ”
では、この「割れ残り」が動くと、どんな被害が想定されるのでしょうか。
今回、現地で調査をした、熊本大学の鳥井特任准教授。
熊本大学 鳥井真之 特任准教授
「ちょうど今、私たちが立っている足元に実は断層が存在する。この断層の延長部分がちょうどこの校舎を通過する」
こちらの小学校は国の耐震基準を満たしていました。
しかし、校舎の真下を通る断層が動いたことで、建物には大きな亀裂が入りました。
熊本大学 鳥井准教授
「頑丈な校舎の場合は基礎がきちんとしているので、(地盤のずれに)引きずられて固い校舎は割れてしまった。いくら耐震構造にしても、地盤の変形には対応できない」
同じような被害は、インフラでも起きていました。断層の上を通る南九州自動車道では、路面に段差が。
断層をまたぐ九州新幹線でも、レールがゆがむなどの被害がありました。
いずれも、完全復旧に向けた工事が続いています。
熊本大学 鳥井准教授
「今回の地震で特徴的なのは、断層の直上では家屋がどんなに耐震設計をしていても壊れてしまう。『割れ残り』が動くことによって、再び強い地震が発生することは十分に警戒しないといけない」
沿岸部に“津波のリスク”も
さらに、「割れ残り」がもたらすリスクは地震による揺れだけではありません。
八代海の海底にも続く、日奈久断層帯。
ここにある「割れ残り」が動いた場合、懸念されているのが「津波」の発生です。
東北大学の今村教授は、八代海周辺の地形から、その影響の大きさを指摘します。
東北大学災害科学国際研究所 今村文彦教授
「かなり沿岸部の近くで地震が発生するため、津波の到達時間も非常に早い。八代海は『閉鎖的な湾』になりますので、一旦発生した津波はおそらく長時間影響するのではないか。振動しながらなかなか減衰しない、小さくならない」
おととしの能登半島地震では、海底に伸びた断層が動きました。このとき、沿岸部に短時間で津波が押し寄せました。
県によると、日奈久断層帯でM7.9の地震が発生した場合、想定される津波の高さは最大1.2メートル。上天草市には最短9分で津波が到達すると想定されています。
沿岸の住民からは、不安の声も…
八代市に住む女性
「逃げる場所がないですもん、八代は。高いところがない。直接、海だから多分(津波が)すぐ来る」
八代市に住む男性
「これだけ近いと不安はある。台風とかと違って予想がつかない」
全国にある活断層“備え”は?
一方、次の地震で津波が起きた場合、さらに被害を拡大させかねない現象も起きていました。
今回の地震では県内の広い範囲で、地盤全体が沈み込んだことが確認されました。
記者
「八代市の沿岸部に来ています。こちらの橋は手前の地面が大きく沈んでおり、通行ができない状態となっています」
八代市の沿岸では約20cm、地盤が沈んだといいます。
八代市に住む男性
「地割れして、液状化して田んぼが」
こちらの田んぼでは、液状化によって地面が大きく傾き、稲に水が行き渡らない状態に。
八代市に住む男性
「こんな干割れのところに用水をいれてもすぐに下に落ちてしまう」
この地域では10年前の地震でも、液状化による被害を受けたといいますが…
八代市に住む男性
「これ自分で作り直したんですけどね、10年前に。10年前、これが見えなくなるほど沈んだ。そしてまた作り直して、もう全部作りなおして、また」
全国各地に2000を超える活断層があるとされるなか、どんな備えが必要なのでしょうか。
東北大学 今村文彦教授
「地盤自体が断層によって隆起・沈降する。基盤が大きく変わってしまう。これは完全に止められない。今後の中長期的な対応としては、断層のリスクを正確に出し、そこでの土地利用を考える。回復力があるような対応を考えなければいけない」
全国に潜む「地震リスク」
藤森祥平キャスター:
こちらは全国にある主要な活断層をまとめた地図です。今後30年以内の地震発生確率についてお伝えしていきます。
地図上の色分けは、今後30年以内に地震が発生する確率を表しています。
▼Sランク(赤色): 確率が3%以上と高いエリア
▼Aランク(黄色): 確率が0.1%から3%未満とやや高いエリア
注意が必要なのは、活断層が示されていないエリアであっても決して安心はできないということです。日本には現在2000を超える活断層があると言われており、地図に載っていない場所でも地震は起こり得ます。
今回の熊本地震を引き起こした「日奈久断層帯」を見てみますと、まだ動いていない「割れ残り」の部分があるとされています。このうち「日奈久断層八代海区間」では、今後30年以内にM7.3程度の地震が発生する確率が最大で16%とされています(今年1月発表時点)。では、この「16%」という数字をどのように捉えるべきなのでしょうか。
小川彩佳キャスター:
東北大学災害科学国際研究所の今村教授によると、10%超えというのは非常にリスクが高いということです。この16%という数字も今回の熊本地震が起きる前の評価なので、今回の地震によって16%より高くなっている可能性もあります。
教育経済学者 中室牧子さん:
今回の地震の記憶が薄れないうちに、自治体等では対策を進めていただきたいです。
藤森キャスター:
マップを見ていくと他にも注意が必要な場所があります。
▼糸魚川-静岡構造線断層帯:M7.6程度の地震が発生する確率が最大30%
▼関東地方の三浦半島断層群:M6.6程度、もしくはそれ以上の地震が発生する確率が最大で11%
いずれも非常に高いとされる10%を超えています。
小川キャスター:
注意していただきたいのは、この数値はあくまで活断層による直下型地震のリスクだということです。南海トラフ地震などの海溝型地震のリスクはここには含まれていません。ですから実際には、リスクはさらに高まることになります。
中室牧子さん:
日本の2万世帯以上を調べた研究によると、実際に地震のリスクが非常に高い地域であっても、備蓄などの備えをしている人は非常に少ないということが分かっています。リスクを知っていることと、行動に移すことは、別のことなのだと思います。
9月1日の「防災の日」を機会に、家具の固定や備蓄の確認などを進めて頂きたいです。
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<プロフィール>
中室牧子さん
教育経済学者 教育をデータで分析
著書「科学的根拠で子育て」
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