発生から5日後の逮捕となった東京・赤坂で女性が腹などを刺され重傷を負った事件。警視庁は逃走していた43歳の自衛官の男を逮捕しました。
【写真を見る】赤坂女性刺傷事件「4回着替え」「靴も履き替え」捜査のかく乱が狙いか 容疑者逮捕に至った“リレー捜査”とは【Nスタ解説】
片道約20kmを自転車か 赤坂刺傷事件で自衛官の男を逮捕
井上貴博キャスター:
赤坂で起きた女性刺傷事件につきましては、計画的で用意周到な部分と、雑な部分、それぞれが混在しているような印象を受けます。
殺人未遂の疑いで逮捕されたのが、陸上自衛隊 朝霞駐屯地所属の大津陽一郎容疑者(43)です。
大津容疑者の足取りは、朝霞駐屯地を出て、和光、練馬、落合、早稲田、信濃町、青山を通り事件現場の赤坂に着いたということです。片道約20kmを自転車で移動していました。
「もっと早く容疑者は特定できていた」防犯カメラの“リレー捜査”とは?
井上キャスター:
「リレー捜査」とは一体どういうものなのでしょうか。
例えば、今回は赤坂で事件がありました。相当な量の防犯カメラがあるだろうと思います。それをしらみつぶしに捜査したとして、どのようにして、この数日間で容疑者の行方をたどっていくのでしょうか。
元兵庫県警 棚瀬誠 刑事部長:
リレー捜査は「樹木」で例えると想像しやすいと思います。幹があって、枝があって、葉っぱがある。それを道路になぞらえると、大きい幹線、細かい道、自宅となります。
手当たり次第に防犯カメラ映像を集めてくるわけではなく、ある程度の見当がついていれば、まずは幹から集めていく。その後、枝に行って、葉っぱに行く。
そういう意味では、今回の事件では大きい幹線が使われているので、赤坂~青山の間の防犯カメラを全て取り寄せたというわけではなく、その幹線を通り過ぎたかどうかという見極めは比較的早くできます。
井上キャスター:
映像を取り寄せるのでしょうか。
元兵庫県警 棚瀬誠 刑事部長:
今は、防犯カメラの向きも含めた設置場所がリスト化されているので、ある程度の見当がつけば、「この方向を向いている防犯カメラを集めてこよう」という動作になります。
逆に言えば、反対側の防犯カメラを集めてきても、捜査が無駄になる可能性があるので、一定の向きを決めながら集めてくる。その後、分析するという作業になります。
出水麻衣キャスター:
幹の部分に関しては、ほぼ死角がないと理解してもよいでしょうか。
元兵庫県警 棚瀬誠 刑事部長:
そうだと思います。今回の事件では6日間で逮捕できた。おそらく容疑者はもっと早く特定できていたと思います。
幹の部分で和光くらいまではいけていたのだと思います。その後、枝、葉っぱと突き止めていくのに一定の時間と、逮捕するまでの準備に時間がかかった結果が6日間だったのだと思います。
井上キャスター:
和光までは捜査が進んでいたとのことですが、これは1、2日でたどり着いている感覚でしょうか。
元兵庫県警 棚瀬誠 刑事部長:
私の感覚では約2日間で、和光くらいまでは行けていたのではないかと思います。
落合~練馬の間を自転車が通っていないとすると驚きますが、落合~練馬も自転車で行った。練馬からさらに奥に向かっているということになれば、この幹線道路上の防犯カメラの捜査は、もっといえば、1日でできていたかもしれません。
ただ県警もまたがるので、埼玉県警の協力を得ながら、警視庁の捜査1課が、相当人手を使って頑張っていることを否定するつもりは全くないです。
4回の着替え、靴を変える…容疑者の「逃げ切れるだろう」自信の表れか
井上キャスター:
大津容疑者は、逮捕前の任意の取り調べに対して「(朝霞駐屯地で)午前6時ごろから昼ごろまで、仕事に使う服の手入れなどをしていた。その後、帰宅してからどこにも行っていない。赤坂にも行っていない」と供述しています。
また、大津容疑者は、4回着替えをしていたということです。
【大津容疑者 事件前後で4回着替え】
自宅:出発時は私服姿
↓
朝霞駐屯地:青っぽい上着(着替え1回目)
↓
赤坂(事件現場):黒い上着(着替え2回目)
↓
朝霞駐屯地まで:青っぽい上着(着替え3回目)
↓
自宅:帰宅時は私服姿(着替え4回目)
井上キャスター:
ある程度、捜査をかく乱させたかったのか、ということも想像できます。
また、事件前と事件後で「靴」が変わっていました。事件前は白っぽく見えますが、事件後は白ではない靴に見えます。この辺りからはどのようなことを感じるのでしょうか。
元兵庫県警 棚瀬誠 刑事部長:
推察ですが、警察が防犯カメラのリレー捜査をしてくることを強く認識していたと思います。服を着替えて、靴を変えて、その回数を重ねれば重ねるほど、警察はリレー捜査ができないだろうと。逆に言えば、これは計画性の表れであり、自信の表れだと思います。
結果として、そんなことはなく、警察はきちんと容疑者を特定したことになりますが、靴を変えるのも1つの計画性の表れだと思います。
井上キャスター:
計画性の表れの一方で、ハッキリ言いますと甘いですよね。
元兵庫県警 棚瀬誠 刑事部長:
正直申し上げると、自転車で20km戻ったことには正直びっくりしました。例えば、途中で地下鉄に逃走手段を切り替えるなど、いろいろな逃走の仕方があったはずです。そこが「着替えれば追いかけられないだろう」という自信が表れているのだと思います。
「トラブルない」「赤坂行っていない」今後の捜査ポイントは嘘か否かの立証
井上キャスター:
大津容疑者の自宅には、被害女性と2人で誕生日を祝うような写真があったことが分かっています。
また、逮捕前の任意の取り調べに対して、▼9年ほど前にSNSで知り合う。▼自分に家族がいることを伏せて交際していた。▼今年6月に別れを切り出され、円満に別れた「トラブルは一切ない」と供述しています。
元兵庫県警 棚瀬誠 刑事部長:
今後の捜査のポイントは「動機」です。すなわち、容疑者が犯人なのかどうかをどう立証していくかということになります。
翻って、大津容疑者は「赤坂には行っていない」と言っているようです。赤坂に行っていないのに、警察がたどり着いた「容疑者は被害女性の知人だった」ということが何を意味するのか。
おそらく、警察も「容疑者は嘘をついている」と想定していると思うので、被害女性の回復を待って、女性の話を聞く以外にも、その他の証拠で容疑者が嘘をついていることを立証していく捜査が、これから重要になってくると思います。
出水キャスター:
容疑者が嘘をつく、否認するメリットは何かあるのでしょうか。
元兵庫県警 棚瀬誠 刑事部長:
犯行が発覚すれば、今後有罪になり、刑務所に入るということを恐れているのだと思います。
逃げ切れる自信があった容疑者ですから、最初は警察の取り調べに対しても「自分ではない」と否定していますが、今後、供述が変わるかもしれませんし、それがまさに今後の捜査のポイントになると思います。
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〈プロフィール〉
棚瀬誠さん
元兵庫県警 刑事部長
誘拐・殺人など多くの事件に携わる
元警察庁サイバー捜査課長・防犯カメラの解析を行う
田中ウルヴェ京さん
スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト 慶應義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMia(イミア)」主宰
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