全国で「不登校」の小学生が過去最多となる中、4月上旬、ある小学校が日本ではほとんど前例のない取り組みを始めました。子どもたちにもたらした変化とは。
【写真で見る】苦手を克服したセラピー犬のアンちゃんと3年生の児童
「かわいいの!」 なぜ?小学校の“新入生”に犬
4月上旬、東洋英和女学院小学部には特別な新入生が…
東洋英和女学院小学部 吉田太郎部長
「新しい仲間を紹介したいと思います。ANNE(アン)ちゃんです」
歓声が上がり、踊り出す子もいます。生後4か月の女の子、アンちゃんとの学校生活が始まりました。
子どもたちは輪になって、初めてアンちゃんと触れ合います。
東洋英和女学院小学部 吉田部長
「(犬は)しっぽ降ってる時は楽しい、しっぽ下げていたり固まっていると思ったら嫌なことあるのかなって…」
アンちゃんを通して相手を思いやる心を育んでいきます。
児童
「しっぽ振っていないよ」
「ねえ、嫌がっているよ」
セラピードッグの力 児童の“きっかけ”を
これまで高齢者施設や医療の現場で、心身のケアや認知症の症状緩和といった面で活躍してきたセラピードッグ。欧米を中心に1990年代以降、教育現場にも活動の場を広げていますが、日本での事例はほとんどありません。
そこで吉田先生は日本での普及を目指し、アンちゃんを学校に迎え入れました。
犬の専門知識を持つ吉田先生は、自宅でアンちゃんを飼いながら、日中は学校に同行させています。
東洋英和女学院小学部 吉田部長
「日本では前例のない活動なので、(保護者などから)かんだらどうするんだとか、衛生面、特に(犬)アレルギーの児童への対応が一番言われました。それは心配になる所だと思うが、一つ一つ説明してクリアしながら進めてきた」
なぜ、そこまでしてアンちゃんを入学させたのか。
背景には全国で増加する不登校児童の存在があります。不登校の小学生は13万人を超え、「過去最多」に。
そうした児童を、セラピードッグの力で少しでも減らしたい。そんな思いが、取り組みの原動力になっているのです。
東洋英和女学院小学部 吉田部長
「犬が好きな子にとっては『行ってみようかな』『撫でてみようかな』って、きっかけになると思う」
入学から1か月、アンちゃんは学校のアイドルです。
児童
「いっぱいペロペロしてくれる。めっちゃかわいいの」
「そう!めっちゃかわいいの!」
3年生の花さん。朝6時、目覚まし時計が鳴る前に起きだして、早速、制服に着替えます。
父親「早く学校行きたいの?」
花さん「うん」
父親「なんで?」
花さん「アンちゃんと…」
父親「アンちゃんと遊びたいの?」
花さん「うん」
アンちゃんと児童の挑戦「勇気をもらった」
そんな人気者のアンちゃんの苦手なことは階段です。階段を降りることも、昇ることもできません。
1週間後も、階段を前に、そっと後ずさり。そこで吉田先生は大好物のチーズを使って克服を試みます。子どもたちも、陰からエールを送ります。
児童
「がんばれ」
ついに、階段を降りることに成功
児童
「めっちゃすごい」
「勇気出しててすごいなと思った」
その勇気に背中を押された3年生の鈴奈さんは、苦手なことへの挑戦を決意します。
鈴奈さん
「ピーマン食べてみたい。あと逆上がり」
後日、鈴奈さんのお母さんに話を聞くと…
鈴奈さんの母
「本当にびっくりしたが、チンジャオロースを作ったら、『頑張ってみようかな』と言って、頑張って食べていました」
そして、昼休みには走ってグラウンドの鉄棒に向かう鈴奈さんの姿がありました。
鈴奈さん
「あっ無理だ」
周りの子どもたちは、補助器具なしで回っています。
鈴奈さんがピーマンの次に克服を目指すのは「逆上がり」。汗をかき、手がしびれても、昼休み終了のチャイムが鳴るまで挑み続けました。
そのころ、アンちゃんは躊躇することなく、軽やかに階段を降りていました。
4日後、鈴奈さんは体操着姿であらわれ、気合い十分。不安な表情を浮かべますが、仲間たちは鈴奈さんを励まします。そして、友達の助けを借りながらも、見事1回転。
鈴奈さん
「(Q.今の気持ちは?)暑い」
「(Q.どうして出来たと思う?)みんな助けてくれたから。アンちゃんに勇気をもらった」
アンちゃんと子どもたちの挑戦の日々は、これからも続きます。
トラウデン直美さん「動物とのコミュニケーションは心の癒し」
小川彩佳キャスター:
見ているだけでも心がほころんでいくのを感じました。
藤森祥平キャスター:
今回、東洋英和女学院小学部が取り入れた「スクールセラピードッグ」は、オーストラリアン・ラブラドゥードルという犬種です。
▼におい・抜け毛が少ないという特徴があり、▼温厚で賢く、人懐っこい性格だということで、アレルギー反応が出にくく、セラピードッグに適した犬種といわれています。
トラウデン直美さん:
もちろん動物の環境やストレスに配慮した上ではありますが、教育現場に動物がいるというのは、すごくいいことだと思います。
動物から学べることはたくさんありますし、私も馬と触れ合う中で、非言語的なコミュニケーションの心地よさを感じています。
人と人だと、どうしても「どう見られているか」「こう評価をされてしまう」などと、気にしてしまう余計な部分が多いですが、“対動物”だと少なくて、心の癒しや、心を開くきっかけになるかなと思います。
藤森キャスター:
吉田先生は、不登校は悪いことではなく“SOSの形”だとしています。ただ、学校に犬がいるということが、何かのきっかけになればと強調していました。
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<プロフィール>
トラウデン直美さん
Forbes JAPAN「世界を変える30歳未満」受賞
趣味は乗馬・園芸・旅行
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