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バイク業界から米業界へ異例の転身。信頼を軸に挑む、老舗の革新と継承

2026-07-09 12:00:52

米業界は現在、激しい価格変動や品薄、さらには生産者の高齢化といった深刻な構造的課題に直面している。この難局に、バイク業界からの転身という異色の経歴を持って挑むのが、株式会社山川食糧の代表取締役・山川勇希氏だ。自身より年上のベテランが多い環境に身を置きながらも、異業種で培った多角的な視点と信頼関係の構築を武器に、現場の改革を推進している。これからの米業界を担うリーダーとして、新たな価値創出と持続可能な体制づくりにまい進する山川氏の挑戦を追った。

一年の葛藤を経て決意した「継承」の覚悟

「いつ来るのか?」―その一言に背中を押されながらも、すぐには決断することはできませんでした。むしろ、その言葉を真摯に受け止めたからこそ、一年もの間、迷い続けたのです。結婚を機に婿養子として山川食糧に入社し、2025年12月に代表取締役に就任しました。

私が引き継いだ山川食糧は、創業約60年の歴史を持つ精米加工業者です。主食用の精米に加え、酒造・米菓・味噌などの加工食品向け原料の精米加工や卸売、さらにはオートミールの製造・卸売、EC販売事業まで幅広く展開しています。特に焼酎や米菓用原料の精米加工には強みがあり、業界内で厚い信頼を得てきました。

しかし、そんな盤石な組織も、当時の私にはまったく未知の領域でした。もともと私は無類のバイク好きで、念願だった二輪業界で営業や整備、保険業務に没頭する日々を送っていたからです。その中で出会ったのが、現会長である義父でした。彼から声をかけられたことが、人生の転機となりました。

異業種から飛び込んだ現場では、自分より遥かに年上のベテランに囲まれ、価格の不安定さや品薄といった構造的な難しさを実感しました。それでも前に進むことができたのは、山川食糧が長年築いてきた「信頼」という実績があったからです。強固な取引関係こそが、この道で生きていく覚悟を決めさせてくれました。

先代たちが築いた信頼を守り、いかにして次の時代へとつないでいくか。異業種で培った感性を武器に、新たな価値を付加するための挑戦は、まだ始まったばかりです。

米価高騰と市場の激変をチャンスに。EC展開と新商品で挑む「食」の再定義

市場の激変という逆風の中で、私たちはECサイトを通じた一般消費者向けの米販売を新たに開始しました。以前から自社サイトは運営していましたが、当時はオートミールが中心で、売上の伸び悩みに直面していたのです。

転機となったのは2025年、政府備蓄米が放出された際でした。大量の在庫を確保したものの、既存の販路だけでは不足していたため、背水の陣でECでの直接販売を開始。米価高騰の影響もあり、商品は瞬く間に完売しました。しかし、米市場は依然として不安定です。理想は、生産者、精米業者、消費者の三者が等しく納得できる適正価格の維持です。しかし現実はどこかに歪みが生じている。その溝を埋める形を模索しています。

また、現代のライフスタイルに即した「食」のあり方も再考しています。その中で開発したのが、「オーツ麦ご飯の素」です。従来のオートミールには「食べにくく継続が難しい」という声もありましたが、本品は手軽さとおいしさを両立させ、毎日の食卓に無理なく取り入れられるよう設計しました。

コロナ禍で一時的なブームとなったオートミールを、一過性で終わらせず、日本の新たな食習慣として定着させたいと考えています。

こうした新たな挑戦を支えているのは、熟練の技術を持つベテラン勢の存在です。しかし、社内の若手が一人という現状は、将来を見据えた際の大きな課題でもあります。伝統を守りつつ、いかに次世代へバトンをつないでいくか。組織の持続可能性も、私の重要なミッションです。

EC販売日本一への挑戦。効率化と信頼が生む「三方よし」の経営哲学 

現場の最前線を経験した上で代表に就任した今、直面すべき課題は山積しています。なかでも次世代の人材育成と、業界全体の高齢化への対応は、大きなテーマです。

こうした課題に向き合うなかで、私が何より大切にしたいのは「選ばれ続ける存在であること」。そのためには、徹底した品質管理のもと、揺るぎない商品力を届け続けることが不可欠です。高単価で高品質なものを提供するのは当然ですが、一方で低価格を追求して品質を損なうわけにはいかない。その絶妙なバランスを維持し、確かな価値を提供し続けることこそが、経営の要だと考えています。

現在は、ECサイトでは家計を支える生活応援米からコシヒカリやヒノヒカリといった厳選された銘柄米まで展開していますが、これらを適正価格で提供できているのは、現会長が心血注いで築き上げた設備と生産能力があるからです。徹底した効率化でコストを抑え、その果実を消費者へ還元するサイクルこそが当社の強みです。また、業務用卸において仕入れ先との信頼関係を重視する姿勢は、これからも変わりません。

そして今、私には「ECにおける米販売で日本一を獲る」という明確な目標があります。楽天市場やAmazon、Yahoo!ショッピングに加え、新興のTikTokショップなど、主要全プラットフォームでの首位獲得を見据え、販売スケールを拡大させることで、さらなる価値を消費者へ届けたい。自社の利益にとどまらず、取引先や共に歩む従業員、そして社会へ。関わるすべての人に価値を循環させ、持続的な成長を実現していくことが、私の使命です。

情報提供元: マガジンサミット